産婦人科

産婦人科
女性と赤ちゃんに最善の医療を提供する産婦人科
阪神地域中核病院の産婦人科として、産婦人科救急疾患、婦人科悪性腫瘍、合併症妊娠・分娩の管理、緊急母体搬送の受入れ、など幅広い産婦人科診療を行い、数多くの患者さんの診療に対応しています。内視鏡手術も積極的に取り入れています。周産期医療センターとしてハイリスク妊娠分娩を取り扱うとともに、メディカルバースセンターと産科セミオープンシステムでローリスク妊娠・分娩も行っています。患者さん一人一人に対して丁寧に対応し、スタッフ全員がそこから多くのことを学び、日々研鑽を積んでいます。優れた人材を育成するべく、教育研修環境の整備を行っています。当院は日本産科婦人科学会の周産期登録事業と婦人科悪性腫瘍登録事業に参加しています。
産婦人科の診療方針

科長ご挨拶
産科・周産期では、周産期医療センターとして母体胎児集中治療室(MFICU)6床を有し、ハイリスク妊娠・分娩を取扱い、緊急母体搬送を受け入れています。28床の新生児病床(NICU9床、GCU18床)、小児外科、小児循環器内科・外科があり、先天性疾患・胎児疾患に対応してます。ローリスク妊娠・分娩はメディカルバースセンターで助産師主導で対応しています。また、地域の診療所と連携して産科セミオープンシステムを導入しています。重症母体疾患は集中治療室(GICU等)で管理することが可能です。また、産科出血には、放射線科・麻酔科と協力してアンギオ室やハイブリット手術室で治療を行うことが可能です。婦人科悪性腫瘍の治療では、放射線治療が可能であり、抗癌化学療法を外来化学療法室で行っています。子宮鏡下手術、腹腔鏡下手術も積極的に行っています。胎児診療外来、CIN外来、出生前診断外来といった専門外来を開設しています。「地域医療連携と人材育成」をモットーに地域中核病院として、周辺地域の診療所の先生方、および地域住民の皆様から信頼されるべく日夜奮闘しています。学会発表は年間10回、論文発表は年間2編と、学会活動も活発に行っております。また、産婦人科専門医はもちろん、周産期専門医(母体胎児)、臨床遺伝専門医、細胞診専門医を取得するための教育研修施設の認定を取得しています。小児科と協同で新生児蘇生法A講習会を定期的に開催しています。未来の産婦人科医療を担う優れた産婦人科医師、助産師を養成するべく教育研修環境の整備を行っています。
出産を控える皆様へのメッセージ
「お産は病気ではない」。古くより言い習わされたフレーズです。8割のかたは、特別な医療を必要とせず無事に出産できますから多くの方がこれにあてはまるといえます。しかし、残りの2割の方には何らかの医療が必要であり、なかには適切にかつ迅速に対応しなければ母体、赤ちゃんのいずれかあるいは両方が大変な危機に見舞われる場合もあります。当院は周産期医療センターとしてあらゆる事態に対応できる能力を持っています。出産をしていただく皆さまにはまずその安心感を感じていただきたいと思います。医師、助産師による丁寧な時間をかけた妊婦健診と正確な胎児超音波検査を提供し、健康な人はより健康な妊娠生活を、問題のある方にはその予防と早期発見・早期治療を可能とする相談・指導を行っています。産科病棟には個室が10室あり快適な入院生活を提供しています。当院の「安心と快適」をぜひ実感してください。
婦人科の病気で悩んでおられる皆様へのメッセージ
当院では産科外来(3階)と婦人科外来(2階)があり、婦人科の方は婦人科外来で診察を受けていただきます。ほぼ毎日、女性医師が婦人科外来の診察を担当していますのでご希望の方はお気軽にお申し出ください。継続して診療が必要な患者さんには地域医療連携を積極的に活用しています。
地域の先生方へのメッセージ
当科では、地域の先生方からの紹介・搬送の依頼に24時間ホットラインで対応しています。患者さんに関するご相談などありましたらいつでもご連絡ください。また、胎児診療外来、CIN外来、出生前診断外来、NIPT外来といった専門外来を開設しておりますので患者さんのご紹介をお願いいたします。
診療内容
オンライン診療
以下の説明は当科のオンライン診療受診の予定されている患者さん、妊婦さんのためのものです。無関係の方はメールを送らないでください。
連絡方法
当院の担当医、または地域医療連携センターから連絡を指示された方はEメールアドレ�ã«ã¡ã¼ã«ãéã£ã¦ãã ããããã®éã«å¿ ãæ°åãè¨å ¥ãã ãããæªç»é²ã®æ¹ã¯ä»¥ä¸ã®æ¹æ³ã§ç»é²ãè¡ã£ã¦ãã ããã
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外来
当科は、産科外来と婦人科外来の2つの外来を開設しています。婦人科外来は2階外来フロアのHブロックにあります。産科外来は3階総合周産期母子医療センター前のMブロックにあります。初診では、母子手帳をすでにお持ちか紹介状などで妊娠であることがわかる方は産科外来で、それ以外の方は婦人科外来で対応しています。問診・診察結果により一方の外来に移動していただく場合があります。
産科外来
当科では、総合周産期母子医療センターでハイリスク妊娠、メディカルバースセンターでローリスク妊娠の妊婦健診を行っています。妊娠の半ばまでは医師健診を行いますが、それ以降は、リスクに応じて医師健診、医師と助産師による交互健診、助産師健診のいずれかを選択します。助産師による懇切丁寧な相談・指導と、臨床検査技師による定期的な胎児エコー検査を組み合わせ、効果的かつ、快適な妊婦健診を行うよう心がけています。また、必要があれば、小児循環器医による胎児心エコー検査を依頼します。専門外来として、胎児診療外来、出生前外来を開設しています。産前教室として、たまごクラス、バースクラス、ひよこクラス、ツインクラス、バースクラス(帝王切開バージョン)を開催しています。平成28年6月から、マタニティヨガを開始しました(月2回)。
婦人科外来
エコー検査、子宮頸部・体部細胞診、腫瘍マーカー、病理検査、コルポスコピー、CT検査、MRI検査などを駆使して正確な診断を行い、適切な治療の選択を行っています。CIN外来では近隣のクリニックよりご紹介を頂き精査を行っています。
入院(産科・周産期)
3階の総合周産期母子医療センター(メディカルバースセンター、一般産科病床含む)で産科・周産期診療を行っています。分娩室2室、ハイリスク分娩室1室、LDR(Labor-Delivery-Recovery)2室、陣痛室3室があり、LDRでは陣痛、分娩、回復期にわたり移動を必要とせず快適なお産をしていただけます。ハイリスク分娩室ではリスクに高い出産や産科手術を行うことができます。MFICU(母体胎児集中治療室)ではハイリスク妊娠分娩の集中管理を行います。10床の個室があり快適な入院生活を提供しています。新生児病棟(NICU、GCU)が隣接しており、治療の必要な場合は即座に新生児専門医が対応します。
入院(婦人科)
婦人科の患者さんは8階東病棟に入院していただきますが、救急受診の患者さんは原則、救急病棟に入院していただきます。手術直後はGHCU、あるいはGICUに入室していただく場合もあります。
悪性腫瘍
細胞診検査、病理検査、腫瘍マーカー、コルポスコピー、エコー検査、CT検査、MRI検査などを駆使して正確な診断を行い、適切な治療の選択に努めています。手術療法、抗がん化学療法、放射線療法を組み合わせた効果的な治療を行うとともに、合併症・副作用の軽減に努め、快適な入院生活を送っていただけるよう努めています。また、外来化学療法も積極的に行っています。
良性疾患
子宮筋腫、卵巣腫瘍などの良性腫瘍、子宮内膜症、および性器脱といった良性疾患においては、患者さんのご希望をしっかりくみ取り治療計画を立てています。外来での薬物治療のほか、必要があれば手術療法を選択する場合もあります。手術を選択する場合は、可能であればより低侵襲な内視鏡下手術を選択するようにしています。
婦人科内視鏡外来
令和3年4月から「婦人科内視鏡外来」を開設しております。
当院では、これまで、腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術に積極的に取り組んでまいりました。おかげさまで、腹腔鏡下膣式子宮全摘術、腹腔鏡下子宮筋腫摘出術、腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術などの腹腔鏡下手術症例、および子宮鏡下筋腫摘出術などの子宮鏡下手術症例いずれも年々増加しております。なかでも、不妊症で手術療法が必要な場合、術式、タイミングなど不妊治療とうまく連動した治療を考える必要があり、時間をかけて患者さんとよくご相談するのが望ましいと思われます。
当科ではこの度、主として、不妊症があり何らかの婦人科的手術療法を必要とする患者さんをご紹介いただくための専門外来「婦人科内視鏡外来」を開設させていただくことにいたしました。
開設日 | 毎週水曜日 午後 |
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担当医師 | 安堂有希子(産婦人科内視鏡技術認定医) |
診療受入体制 | 専用ファックス予約依頼票に記入いただき、当院地域医療連携センターへお送りください。 |
産科セミオープンシステム
産科セミオープンシステムは、妊婦健診は近くの医院で、お産は設備・人員の整った病院で、という新しいお産のシステムで、利便性、快適性、安全性に優れ、これからの新しいお産のかたちを提供するものです。当科では平成23年11月より産科セミオープンシステムを開始しました。概要は以下の通りですのでご利用をご希望の方は産科外来、産婦人科担当医、または下記の登録医にご相談ください。
- 妊娠初期に医院より当院に登録申込み
- 以後、医院にて妊婦健診継続
- 妊娠24〜28週ごろに当院を受診
- 以後、医院にて妊婦健診継続
- 妊娠36週ごろに当院を受診
- 出産終了まで当院で妊婦健診継続
- 出産は当院で
- 産後検診は医院または当院で
産科セミオープンシステム登録医(令和5年3月時点)
- 伊藤産婦人科医院(伊藤進一院長、尼崎市南塚口町1-7-5、06-6426-6177
ホームページ http://www.ito-sanfujinka.com) - 大原クリニック(大原敬太郎院長、尼崎市南武庫之荘3丁目21-24、06-6436-5668
ホームページ http://cwaweb.bai.ne.jp/~oohara/) - JUNレディースクリニック(村田純江院長、尼崎市潮江1丁目3-43、緑遊新都心ビル2F、06-4960-8115
ホームページ http://www.jun-lc.jp) - ウイメンズクリニック横田(横田光院長、尼崎市塚口町1丁目24-2、06-6421-7240
ホームページ http://wclinic-yokota.com) - いけざわレディースクリニック(池澤孝夫院長、伊丹市西台1丁目2-11、072-777-8184
ホームページ http://www.ikezawa-clinic.jp) - 産科婦人科衣笠クリニック(衣笠隆之院長、尼崎市東園田9丁目10-1、06-6494-0070)
- みつこウイメンズクリニック(山田美津子院長、伊丹市池尻4-9-14 リバーサイド池尻2階、072-744-2334
ホームページ http://www.mitsukoclinic.com) - レディースクリニックTaya(多養哲治院長、伊丹市伊丹1丁目10-14アリオ1 2F、072-771-7717
ホームページ http://www.lc-taya.jp) - 愛和レディースクリニック(高島正樹院長、伊丹市池尻1-204-2、072-770-2000
ホームページ http://www.aiwa-ladies.com) - 清水産婦人科医院(清水 卓院長、宝塚市南口2丁目2-4、0797-72-0300
ホームページ http://shimizu-wcl.com) - 武居レディースクリニック塚口院(武居智信院長、尼崎市上坂部1丁目1-1 ビエラ塚口3F、06-6499-3355
ホームページ http://www.takei-ladies.com) - さかねレディースクリニック(坂根理矢院長、尼崎市南塚口町3-4-27、06-4961-5151
ホームページ https://sakane-ladies.com) - 南川クリニック(南川義夫院長、尼崎市塚口本町2-20-1、TEL06-6423-3046
ホームページ https://www.minakawa-obgy.or.jp) - かないレディースクリニック(金井利仁院長、尼崎市塚口町5-10-3、TEL:06-4961-6050
ホームページhttp://www.kanai-clinic.com) - 尼崎医療生協病院(西尾美穂部長、尼崎市南武庫之荘12-16-1、TEL:06-6436-1701
ホームページhttps://www.ama-hch.jp) - AMAレディースクリニック(田中慶介院長、尼崎市西大物町12番41号 アマゴッタ4階、TEL:06-4950-6013
ホームページhttps://ama-lc.com/)
胎児エコー検査
当院で妊婦健診を受けていただいている妊婦さんには、妊婦健診時、必要に応じて、胎児エコー検査を受けていただいております。胎児エコー検査は、産科外来の診察室で医師・助産師が行う場合と、妊娠中に検査部超音波検査室で当院の臨床検査技師が行う場合があります。検査部超音波室での胎児エコー検査は、臨床検査技師が、ゆっくり時間をかけて胎児をエコー検査で観察し、何か異常がないかを調べます。妊娠20週〜23週、妊娠28〜29週、妊娠34〜35週に、妊婦健診とともに、当院の臨床検査技師が検査部超音波室で行います。所要時間は約30分です。いずれの回も、その前の妊婦健診のときに検査の予約を入れさせていただきます。エコー検査の予約枠の関係で妊婦健診の日程を調整させていただくことがありますし、場合によっては省略することがあります。
ご注意
産科外来と検査部超音波検査室での胎児エコー検査で、さまざまな胎児情報が得られます。胎児形態異常、胎児発育など、胎児エコー検査でわかる胎児の問題・異常については原則的にすべて妊婦さんにお知らせしていますが、胎児後頸部浮腫(NT)などのように、それ自体が異常というわけではないが染色体異常の確率との関連のある所見については、通常の胎児エコー検査では積極的には観察しておりません。ただ、これらの所見が偶然観察されることがあり、このような所見の告知を希望されない方はあらかじめお申し出ください。NTの積極的な観察・評価を希望される方は出生前外来の受診をお勧めします。
出生前外来
当院では、2020年8月から出生前診断外来、NIPT外来を再編し、出生前外来を開設しました。これに伴い、他の医療機関からの紹介を受入れることになりました。受け入れ可能な医療機関は、協定書を締結した27医療機関です。この27医療機関からの紹介の妊婦さんと当院通院中の妊婦さんは希望されれば当外来を受診することができます。
診療体制(2021年1月時点、変更の可能性あり)
開設時間 | 毎週 月曜日 午前 水曜日 午前 金曜日 午前 |
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担当 | 佐藤(臨床遺伝専門医、FMF certificate取得) 今村(臨床遺伝専門医、日本産科婦人科遺伝診療学会認定医(周産期)、FMF certificate取得) |
診療所要時間 | 30分~1時間 |
対象疾患について
各検査によって少しの違いはありますが、今回のスクリーニング検査の対象となっている染色体疾患はダウン症候群、18トリソミー、13トリソミーの3種類です。
ダウン症候群は21番染色体が1本多い染色体疾患です。そこで21トリソミーとも呼ばれます。ダウン症候群は常染色体の変化による疾患の中では最も頻度が高い疾患です。ダウン症の人には知的発達や運動発達の遅れがみられたり、先天性心疾患などの病気の合併がみられますが、その程度は一人一人で異なります。発達は全体的にゆっくりな傾向があります。根本的な治療法は今のところありませんが、最近の医療や療育、教育の進歩によりほとんどの方が学校生活や社会生活を送っています。中には趣味を生かし、画家や書道家、俳優として活躍している人もいます。
18トリソミーは、18番染色体が一本多い染色体疾患です。子宮内から赤ちゃんの体重発育が遅れることが多く、90%に先天性の心臓病があり、その重症度が赤ちゃんの生命力に大きく影響すると考えられています。また運動面、知的な発達は強い遅れを認めます。出生1ヶ月で約半数が亡くなり、1年後の生存率は約10%といわれていますが、中学生になるまで成長した方もいらっしゃいます。
13トリソミーは、13番染色体が一本多い染色体疾患です。複数の先天的な内臓疾患などを合併します。80%以上が重篤な先天性心疾患を合併するとされ、運動や知的な発達は強い遅れを認めます。生命的な予後は内臓合併症によりますが、1年後の生存率は約10%といわれています。
これらはすべてスクリーニング検査であり、確定診断である絨毛検査や羊水検査をうけるかどうかを判断するための助けとなるものです。羊水検査には流早産のリスク等を伴いますので、希望されるかたにはあらためて検査についての説明をさせていただき同意を得たかたにおこなっております。(当院では現在、絨毛検査は施行しておりません。)
NIPT(母体血中cell-free DNAを用いた無侵襲的出生前遺伝学的検査)
1.意義と対象疾患
1997年に妊婦さんの血液の血漿成分中に胎盤に由来する浮遊DNAが含まれていることが報告され、それを用いて赤ちゃんの性別や遺伝子病を診断する研究が行われてきました。また、赤ちゃんの染色体疾患の診断に応用する研究も行われていました。そこに、高速度に遺伝子配列を読む研究装置が開発され、この研究分野に応用されるようになりました。この装置を用いて、母体血漿中の浮遊DNAの断片の遺伝子配列を解読することで、DNA断片が何番染色体に由来しているかを判定することができます。そして、染色体ごとにその断片数を集計して、赤ちゃんの染色体の数の変化、その代表的疾患がダウン症候群(21トリソミー)や18トリソミー、13トリソミーですが、その検出を行います(母体血中cell-free DNA胎児染色体検査:母体血胎児染色体検査と略す)。
この検査で検出できる染色体疾患はダウン症、18トリソミー、13トリソミーの3種類です。
2.方法
本検査は、妊婦さんが検査や検査でわかる疾患、検査結果によって起きうる状況について十分理解した上で行われる検査です。
高齢妊娠、前のお子様が染色体疾患であった、超音波検査で染色体疾患を疑う所見があるなど、赤ちゃんに染色体疾患(ダウン症[21トリソミー]、18トリソミー、13トリソミー)がみられる可能性が通常の妊婦さんに比べて高いと考えられる妊婦さんをおもな対象としています。検査を希望される場合は、本検査とともに羊水検査や絨毛検査などの確定的検査も説明して遺伝カウンセリングを行います。本検査は確定的検査ではないので、超音波所見などでダウン症[21トリソミー]、18トリソミー、13トリソミーが極めて高く疑われる場合や他の染色体疾患が疑われる場合は、本検査を受ける意味がありません。それらの説明を理解した上で、本検査を自らの意思で希望する場合に約20mL採血します。検査会社に送られて検査されます。
検査でわかることは、赤ちゃんの染色体の中で21番、18番、13番染色体の数的変化の有無です。検査結果がでるまでには約2週間かかります。検査結果は遺伝カウンセリング外来で説明します。検査結果が染色体疾患を疑うという結果であった場合には、その結果の意味やその後の確定的検査を受けるかどうかの判断などについて、自ら判断できるように遺伝カウンセリングを行いながらサポートいたします。
3.精度
この検査の精度ですが、検査結果が陰性の場合、赤ちゃんにその染色体疾患がみられる確率は0.1%以下といえます。検査結果が陽性の場合、赤ちゃんにその染色体疾患のみられる確率は相当高くなりますが、年齢や異常所見の有無によって異なります。通常の適応で羊水検査をうける方(今回この検査を受ける方に相当します)の場合は、この検査の陽性適中率(検査が陽性とでた場合に実際に染色体疾患が見られる率)は約80-95%です。このように本検査は、母体と赤ちゃんの双方にとって侵襲がなく、生まれてくる赤ちゃんに見られる主な染色体疾患である21番、18番、13番染色体の数の変化を高い精度で検出する検査です。検査には、赤ちゃんに疾患があるのに陰性と出る(偽陰性)ことや、疾患がないのに陽性と出る(偽陽性)ことが稀にあります。よって、確実な診断には羊水穿刺や絨毛採取による染色体検査が必要になります。また母体の血漿中に浮遊する胎児のDNA断片量が少ないとうまく結果がでなくて判定保留となることがあります。その場合はもう一度採血をして再度検査することとなります。再検査による追加の費用は発生しません。
4.検査の時期、費用
検査は妊娠10週から22週まで可能ですが、検査が陽性であったときに羊水検査をする必要性があることなどから妊娠14週までに受けることがのぞましいと考えられます。費用は自費で約11万円です。(2023年時点、カウンセリング料込み)
5.NIPT後の検査
結果が陽性の場合、確定診断である羊水検査が勧められます。羊水検査についてはまた別途説明させていただきます。
コンバインドテスト(ファーストスクリーン™)
1.対象となる胎児の疾患
ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー
2.検査方法
妊婦さんから血液を採取し、血液中のPAPA-AとhCGと言う成分を測定します。これらは妊娠中に胎児または胎盤で作られる成分です。これらは妊娠が進むにつれて増減しますが、胎児が対象疾患であるかどうかも影響します。
コンバインドテストは2つの成分の値と超音波検査によるNT(Nuchal Translucency:胎児後頸部浮腫)測定の結果、および妊婦さんの年齢、体重、家族歴、インスリン依存性糖尿病の有無のような因子を用いて、胎児がそれぞれの疾患であるかどうかの確率を算出します。ダウン症候群の検出率は80%程度を言われています。(NTについては超音波マーカー検査についての説明書もご参照ください。)
妊婦さんの年齢が高くなるほど、ダウン症候群や18トリソミーの赤ちゃんが生まれる頻度が高くなるので、コンバインドテストの検査結果も高くなる傾向があります。
3.検査の時期
超音波検査で胎児のCRL(Crown Rump Length:胎児頭殿長)が39〜84mmの時期のみ検査を受けることができます。このCRLは概ね妊娠11週から14週になりますが胎児の個体差もあるので当院では12〜13週に来院していただいています。ただ、測定条件が悪いと(胎児の向きや母体の肥満、子宮筋腫など)計測できないことがあります。その場合は母体血清マーカー検査、NIPT検査などほかの検査がすすめられます。
4.費用
自費診療で約37,000円です。(2023年時点、カウンセリング料込み)
5.所要日数
検査後約10日間です。
6.検査結果の報告の仕方
胎児が疾患である確率が1/○○○と言うように確率で報告されます。それぞれの疾患について、基準となる確率(カットオフ値)が定められています。カットオフ地を検査を受けた妊婦さんの確率を比較し高い場合はScreen Positive(スクリーニング陽性)、低い場合にはScreen Negative(スクリーニング陰性)と報告されます。
Screen Positveは確率がカットオフ値より高いが、生まれてくる児が必ず対象疾患に罹患していると言うことではなく、逆にScreen Negativeはカットオフ値より低いが対象疾患の児が絶対に生まれないと言うことではありません。(双胎妊娠の場合、18トリソミーの結果は報告されません。)
7.コンバインドテスト後の検査
スクリーニング陽性の場合、確定診断となる絨毛検査や羊水検査がすすめられます。当院では絨毛検査は施行していないため羊水検査となります。また別途説明させていただき同意を得た方に施行します。結果を聞くのが妊娠14週までの方には羊水検査の前にNIPT検査をうけるという選択肢もあります。
クアトロテスト
1.意義
クアトロテストは、赤ちゃんが下記の対象となる疾患を持っている確率を算出するスクリーニング検査です。確定診断である羊水検査や、より正確な情報を得るための画像診断の必要性を考慮する材料になります。クアトロテストは、妊婦さんの年齢のみに依存しない妊婦さん一人ひとりの確率を算出します。
2.対象疾患
ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、開放性神経管奇形
3.方法
妊婦さんから少量の血液を採取し、血液中の4つの成分(αフェトプロテイン、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、非抱合型エストリオール、インヒビン)を測定します。これらは妊娠中に赤ちゃんまたは胎盤で作られる成分で、妊娠が進むにつれて増減しますが、赤ちゃんが検査の対象疾患であることによっても増減します。クアトロテストは、年齢と4つの成分の値、および体重、家族歴、インスリン依存性糖尿病の有無を用いて、赤ちゃんがそれぞれの疾患であるかどうかの確率を算出します。年齢が高くなるほど、ダウン症候群の赤ちゃんが生まれる頻度が高くなります。クアトロテストは、母体年齢に固有の確率をもとに計算しているため、年齢の高い妊婦さんほどトリプルマーカーの検査結果の確率が高くなる傾向があります。
4.検査の時期
検査推奨時期は、妊娠15週から17週頃までです。それ以降でも検査をすることは可能ですが、クアトロテストの結果を見てから羊水検査を受ける可能性があるため、16週頃までに受けることが望ましいです。
5.所要日数
採血日から結果が出るまでに約10日かかります。
6.検査結果の報告の仕方
ダウン症候群、18トリソミーの場合
「異常があります」「異常はありません」という形ではなく、確率で報告されます。たとえば妊婦さんの年齢が30歳の場合は、「年齢だけでみた場合のダウン症児妊娠の確率は1/704 年齢とクアトロテストで算出したダウン症児妊娠の確率は1/3134」のように報告されます。
開放性神経管奇形の場合
児がこの疾患である場合クアトロテストで測定する項目の一つのα‐フェトプロテインが増える傾向があります。α‐フェトプロテインの値を妊婦さんの妊娠週数と体重で補正し、疾患の確率を推定します。結果はα‐フェトプロテインの上昇の有無として報告されます。
7.クアトロテスト後の検査
報告された確率を確認した後に、赤ちゃんが対象疾患であるかどうかについて、より正確な情報を得るための検査があります。
8.費用
すべて自費診療で約28,000円(2023年時点、カウンセリング料込み)となります。
超音波マーカー(NT、そのほかのソフトマーカー)検査
1.対象となる胎児の疾患
ダウン症候群(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミー
2.検査方法
超音波にて胎児を観察し、CRL(Crown Rump Length:胎児頭殿長)とNT(Nuchal Translucency:胎児後頸部浮腫)を計測します。(希望者には鼻骨、三尖弁の血流、静脈管の血流など他の項目も測定します)それらの項目と妊婦さんの年齢をFMF(The Fetal Medical Foundation)という妊婦さんと胎児について研究している国際機関が作成した専門のソフトウェアを利用して胎児が染色体疾患である確率を算出します。ダウン症候群の検出率は70%程度と言われています。
妊婦さんの年齢が高くなるほど、ダウン症候群などの赤ちゃんが生まれる頻度が高くなるので、超音波マーカー検査の結果も高くなる傾向があります。
NT肥厚とは
NTは正常、異常にかかわらず、妊娠3ヶ月後ろに見られる胎児後頸部の皮下浮腫(むくみ)のことをいいます。NTの肥厚はダウン症候群をはじめとする染色体疾患や心疾患、リンパ系の疾患の場合に見られることがあります。NTの肥厚が見られても健常な児もたくさんおられます。
NT肥厚がみられたけれども染色体疾患が認められなかった場合には妊娠中期に胎児に心疾患等がないかの精密超音波検査を受けていただきます。
3.検査の時期、費用
超音波検査で胎児のCRLが39〜84mmの時期のみ検査を受けることができます。このCRLは概ね妊娠11週から14週になりますが胎児の個体差もあるので当院では12〜13週に来院していただいています。ただ、測定条件が悪いと(胎児の向きや母体の肥満、子宮筋腫など)計測できないことがあります。その場合は母体血清マーカー検査、NIPT検査などほかの検査がすすめられます。費用はすべて自費診療で18,360円です。(2023年時点、カウンセリング料込み)
4.所要日数
測定ができれば当日結果がわかります。
5.検査結果の報告の仕方
胎児が疾患である確率が1/○○○と言うように確率で報告されます。どれくらいの値で次の検査に進むべきかという明確な基準は設定されていません。
6.超音波マーカー検査後の検査
絨毛検査や羊水検査による胎児染色体分析が確定診断となります。羊水検査を希望される方は別途説明を受け同意していただいた場合にのみ実施しています。超音波マーカー検査の結果を受けて心配だけど、絨毛検査、羊水検査をできるだけ受けたくないという方にはスクリーニング検査ではありますがNIPT検査を受けるという選択肢もあります。
羊水染色体検査
妊娠16〜18週ころに、半日入院していただき(事前の説明の日とは別に検査の日程を設定します)、母体の腹壁から穿刺用の針を子宮内に入れて羊水を採取し、羊水中に浮遊する胎児由来の細胞を回収して、これを検体として胎児の染色体を分析するものです。胎児に染色体異常があるかどうかの確定的結果を得るために行う検査です。穿刺にともなう合併症として、破水・子宮内感染・流産・胎児死亡などがあり、侵襲的検査といえます。羊水を採取してから結果が判明するまでに約3週間がかかります(FISH法を追加した場合は特定の異常のみ1週間程度で結果が判明します)。結果をお知らせするためにもう一度外来を受診して頂く必要があります。
胎児診療外来
平成23年6月より胎児診療外来を開設させていただいております。以下のような内容となっておりますので、受診をご希望される方は担当の先生、または当院地域医療連携センターにご相談ください。
対象
- 胎児に何らかの疾患が疑われるあるいはそのリスクが高いと推定される場合。
- 専門医による胎児超音波スクリーニングを希望する場合。
- そのほか、周産期遺伝相談の希望がある場合、など。
開設時間 | 毎週 月・火曜日:午後 |
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担当 | 佐藤 浩(産婦人科医長) |
診療受入体制 | 予約制(3日前までに) 胎児診療外来申込書をFAXで地域医療連携センターに送付してください。 地域医療連携センターから予約確定後速やかにFAXにて予約確認書を返送します。 遺伝相談は、当院外来受診2回目以降に利用可能となります。 |
診察所要時間 | 30分から1時間 |
料金 |
(平成28年4月時点。保険適応などで実際の内容と異なることがあります)
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産科こころケア外来(毎週火曜日午前・木曜日終日)
産科医がお母さんの産後の疲れをチェックする外来です
誰にでも気がつかないうちに疲れがたまっている可能性があります
産後の疲れは、放置すると産後うつになることもあります
受診しておくと安心です
産後うつ病は珍しい病気ではありません。先進国では5人から10人に1人は出産後に産後うつ病にかかるといわれています。悪化するとお母さんは家事や育児ができなくなり、重症例では発作的な自殺や心中に及ぶこともあります。また、中等症以上で治療を受けていない母親に長期間養育された子供では知的発達の問題が生じる可能性が指摘されています。
このように深刻な事態におよぶ可能性があるにもかかわらず、産後うつ病の認知度は高くありません。そこで、当院では、患者様、ご家族様に産後うつ病に関心を持っていただけるよう、産後1ヶ月検診において、EPDS(エジンバラ産後うつ病自己評価票)にもとづいた産後うつ病スクリーニングを行っております。また、EPDS陽性者全員及び不安のある方を対象とした、「産科こころケア外来」を行っております。
「産科こころケア外来」は、産科医が産後のこころの状態をチェックする外来です。毎週火曜日午前と木曜日終日に開設しています。
1ヶ月検診でEPDS陽性の方へ:EPDS陽性でも産後うつ病というわけではありませんし、自然に、速やかに回復なさる方も大勢いらっしゃいます。したがって、これだけでは精神科受診が必要とは言えません。しかし、産後うつ病は、自覚がない場合が多いことと発症時期が人それぞれ(ピークは産後6週間目)であるため、気にかけておいた方が安心です。こころケア外来は1回30分でゆっくりとお話を伺えるので、ニーズにあった対応や情報提供をさせていただけます。詳しいことは、産後検診時にお渡ししたプリントをご覧下さい。
ご家族の方へ
産後うつ病は予後の良い病気ですが、放置させると悪化、慢性化することがあり、回復の機会を失います。安心できる子育て環境を作るためにも、受診して頂き、回復していることを確認することをおすすめします。また、保険診療なので大きな負担にはなりませんし、院内のイベントのご案内や赤ちゃんの体重測定などのサービスも行っております。
電話訪問の方へ
EPDS陽性で受診されないのは、とても心配ですから電話訪問をさせていただいております。電話訪問の予約日時におこし下されば、対面診察も可能です。なお、つながらなかった場合には、地域の保健師に連絡する場合があります
産科医にすすめられたわけではないが、受診希望のある方へ
EPDS陰性なら心配無いというわけではありません。産後検診で異常がなくても、気になる症状がある場合、産後検診以降に症状が出た場合、相談はしたいがどうしていいかわからない場合などお気軽にご相談ください。当院以外での出産の方は、出産時の状況がわかる書類をお持ち下さい。
もし治療が必要と判断されたら
産後であること、赤ちゃんがいること、(授乳中であること)を配慮したフォローをいたします。少しの待ち時間はいただきますが、こころケア受診日に当院精神科受診が可能です。診察は、産科の診察室周辺で行うので、移動の必要がなく、赤ちゃん連れでも楽に受診できます。薬物療法をご希望の際には、授乳の継続が可能な治療も行えます。
精神科医師の診療まではご希望のない方は、公認心理士によるカウンセリングも可能です。
受診時期、期間について
こころケア外来は、産後6ヶ月までを目安にご利用いただけます。当院で継続して診療後、長期間、改善が見られない場合は、地域へ紹介させていただくことがあります。なお、6ヶ月以降でも診察可能な場合がございますのでお問い合わせ下さい。
受診希望や変更に関する連絡先
兵庫県立総合医療センター Mブロック産科外来
胎児心エコー外来
診療内容
産科医師から紹介された方、スクリーニング検査で異常が疑われた方を対象に、小児循環器内科医が胎児心エコー検査を行い、心臓病の診断を行います。検査は生理検査室(2F)で、診察は小児循環器内科外来(2F Bブロック)で行われます。
診察日
毎週月曜日:午前
水曜日・金曜日:午後
詳細は、定期健診時などに産科の主治医にお尋ねください。
診療実績
2015年7月当院開設以降、2019年3月までの胎児心エコー外来受診数はのべ171件で、年間50から60件です。
【年度別胎児心エコー外来受診数】
そのうち、先天性心疾患と診断された症例は64例で、心室中隔欠損が最も多く、ファロー四徴症、両大血管右室起始症、大動脈離断/縮窄、エプスタイン病、単心室、完全大血管転位、重症肺動脈狭窄/閉鎖、左心低形成症候群などが続いています。
【先天性心疾患診断名】
これらの症例のほとんどが、当院で出生し、NICUに入院し、心臓血管外科手術を受けています。
無痛分娩について
当院では以下の方針で和痛(無痛)分娩を実施しています。
なお、医学的適応とは、心・脳血管疾患などを合併し、陣痛が身体に危険をもたらす場合をいいます。
当院の方針
- 医学的適応のある妊婦に対してのみ硬膜外和痛(無痛)分娩を実施する。
- 無痛分娩麻酔管理者を指名する。(2024年9月時点:産婦人科 角井 和代)
- 硬膜外和痛(無痛)分娩説明・同意書、和痛(無痛)分娩マニュアル、和痛(無痛)分娩看護マニュアル、急変時対応マニュアルを策定し、その内容を産婦人科医師、麻酔科医師、産科病棟助産師・看護師全員に周知徹底する。
- 実施し際しては和痛(無痛)分娩マニュアル、和痛(無痛)分娩看護マニュアルを遵守する。
- 母体救命講習会(JCIMELS)、および新生児蘇生法講習会(Aコース)を開催し、産婦人科医師、助産師、看護師の受講を推進する。
- 関連するインシデントについては速やかに院内医療安全部に報告する。重大インシデントについては、兵庫県産科婦人科学会、日本産婦人科医会に報告する。死亡事例については日本産婦人科医会に報告するとともに、医療事故調査・支援センターへの報告と院内事故調査委員会の開催を検討する。
胎児治療
当院では、次のような胎児治療が実施可能です。
- 胎児採血・輸血
- 無心体双胎(TRAP sequence)に対するラジオ波熱凝固による胎内血流遮断術
- 胎児腹腔穿刺・胎児胸腔穿刺
- 経羊水的薬物投与
- 経母体的薬物投与
無心体双胎(TRAP sequence)に対するラジオ波熱凝固による胎内血流遮断術
RAP sequence(Twin reversed arterial perfusion sequence、無心体双胎妊娠)は、一絨毛膜性双胎妊娠の1%(約35000分娩に1例)の頻度で発生する極めて稀な妊娠合併症です。胎盤表面の双胎間動脈吻合と器官形成期における一児死亡により、死亡児は逆行性血流路により不充分ながらも酸素・栄養の供給が維持され、紙様児となることを免れ、いわゆる無心体となります。本症は、健側児の心拍出が、胎盤表面の双胎間動脈・動脈吻合を介する逆行性血流路により既に有効な心拍出能を喪失した死亡児の血液潅流を代償する特異的循環動態を形成し、過剰駆出負荷の持続が高拍出性の代償性心不全を引き起こし、最終的に非代償性の心不全や胎児水腫となります。その周産期死亡率は50〜75%にも達するという報告もあり、厳重な周産期管理が要求されます。近年、ラジオ波熱凝固による無心体血流遮断術が報告され、その有効性が確認されています。
目的
ラジオ波熱凝固により無心体内の血管を凝固することにより血流を遮断し、健側児の心不全、胎児水腫、羊水過多症を改善させようとするものです。これにより、さらなる妊娠延長が可能となり、健側児は、生存はもとより、新生児期に濃厚な治療を要することなく成育することが可能となる効果が期待されます。
方法
母体に硬膜外麻酔、あるいは全身麻酔を施し、母体腹壁より超音波ガイド下にラジオ波熱凝固針を無心体臍部に穿刺し、血流遮断するまで段階的に電気エネルギーを増大させます。羊水過多症を伴っている場合は必要に応じ羊水除去術を併用します。
適応基準:以下の項目のうちいずれかにあてはまる。
- 無心体/健側児 腹囲比 1.0以上
- 羊水過多症がある(最大羊水深度 8cm以上)
- 健側児の血流異常(臍帯動脈の拡張期血流途絶/逆流、臍帯静脈の波動、静脈管の逆流、など)
- 健側児の胎児水腫
- 一羊膜双胎
除外基準:以下の項目のうちいずれかにあてはまる。
- 妊娠28週以降
- 著明な健側児心不全
- 頸管長20mm未満の切迫流早産例
- 継続を許容できない合併症を有する症例
- 健側児に重大な先天異常がある
使用する医薬品、医用材料
市販されているCool-tip RF System(RADIONICS社)及びラジオ波熱凝固専用針(RFA針)及びカラードップラー超音波診断装置。そのほか、麻酔・手術維持に必要な一般的な物品・薬品類
費用
本術式は、現時点では保険適応を有さないことから、その施行に関しては自費診療となります。概算では、治療に関わる患者負担は3日間の入院期間で約35万円〜40万円となります。入院4日目からは、通常の産科・周産期管理を要すれば一般健康保険診療での取り扱いとなります。また、治療の成否にかかわらず、通常の産科・周産期診療が必要と判断された段階で健康保険診療の対象となります。
地域連携CINパス(CIN:子宮頸部上皮内病変)とCIN外来
子宮頸部上皮内病変の患者さんにわかりやすく安全で質の高い医療を提供するために「地域連携計画書 子宮頸部上皮内病変用(地域連携CINパス)」を開始しました。「地域連携CINパス」では病気の経過を予測して良質な診療計画を立て、患者さんの納得を得たうえで当院とかかりつけの医師(かかりつけ医)が協力して診療にあたります。CIN外来は、子宮頸がん検診(子宮頸部細胞診)で要精密検査となった患者さんにコルポスコピ—など精密検査を実施する外来で、かかりつけ医からファックスで予約を取ることができ、患者さんにとっては待ち時間と受診回数の軽減の効果があります。可能であれば、CIN連携ノートを用いて、精密検査・治療を行った当院とかかりつけ医が協力し、専門的な医療と総合的な医療をバランスよく提供する共同診療体制をつくります。
対象患者さん:CIN外来対象患者さん
- 明らかな子宮頸部浸潤癌が見つかっておらず、かかりつけ医による子宮頸部細胞診でASC-USかつHPVテスト陽性、あるいは子宮頸部細胞診でLSIL、ASC-H、HSIL、SCC、AGC、AIS、Adenocarcinomaと判定された、のいずれかの方。
- かかりつけ医が地域連携CINパスで管理していて、精密検査(コルポスコピ—、等)が必要となった方。
地域連携CINパス対象患者さん
- かかりつけ医からCIN外来へ紹介され、当院でのコルポスコピ—、ねらい生検で、子宮頸部上皮内病変(CIN)2度以下で、HPVタイピングで陰性、あるいは中リスクタイプが検出された方。
- 子宮頸部円錐切除術、あるいは子宮全摘術を当院で受け、術前後の病理診断で子宮頸部上皮内がんを超える病変がなかったことが確定した方。
- 高リスクHPVが検出され、当院で経過観察されていたが、CIN病変が検出されなくなった方。
手順
- 初診患者さんは、かかりつけ医から当院地域医療連携センターを通じて、当院CIN外来枠を予約していただきます。
- 地域連携CINパス管理下の患者さんで当院の受診が必要となった場合は、かかりつけ医に紹介状を作成していただき、患者さんは当院予約係に電話の上、CIN外来枠をとり受診していただきます。
- CIN外来で診察・検査を行い、結果が判明、方針が決定しましたら、かかりつけ医に報告書を送付いたします。その場合、地域連携CINパスの対象となった場合は、患者さんから同意書の署名をいただき、報告書とCIN連携ノートをお渡しし、次回のかかりつけ医受診時期を指示いたします。
- 術後に地域連携CINパス対象となった場合は、患者さんから同意書の署名をいただき、報告書とCIN連携ノートを渡し、次回のかかりつけ医受診時期を指示いたします。
子宮頸がん検診と子宮頸がん予防ワクチン
「子宮頸がんは簡単な検診で早期発見が可能です」
子宮頸がんにはがん検診が非常に有効です。定期的にがん検診を受けることで早期発見が可能です。子宮頸がん検診には公費助成制度があります(20歳から、2年ごと)。なお、当院は二次検診施設のため、公費助成制度による子宮頸がん検診は取り扱っておりません。
「若い女性の子宮頸がんが増加」
若い女性(20〜30歳台)の子宮頸がんが増加しています。20歳になったら子宮頸がん検診を受けましょう。(性交未体験の方は除く)
「子宮頸がんはヒト乳頭腫ウイルス(HPV)により発生することが判明」
ヒトパピローマウイルス(HPV)は性交体験のある女性の80%近くが一度は感染するといわれているごくありふれたウイルスで、多くの方では感染は一時的で何も問題ありません。しかし、一部の方ではこのウイルスが持続的に感染し子宮頸がんを引き起こすとされています。
「ワクチンで子宮頸がんを予防しよう」
子宮頸がん予防ワクチンが発売されました。このワクチンはHPVの感染を防止することで子宮頸がんを防ごうとするものです。若いうちにワクチン接種を受けましょう。中学1年生から高校1年生には公費助成制度があります(平成23、24年度)。ワクチンを接種しても100%の予防効果ではないので子宮頸がん検診は必要です。
「効果的に子宮頸がん検診を受けよう」
効果的な子宮頸がん検診の受け方として以下のような方法を提案します。当院では、子宮頸がん検診用の器具を綿棒からブラシに変更し検査の信頼性を高めました。
- 20歳になったら子宮頸がん検診を開始(ただし性交未体験の方は除く)
- 20歳代は毎年検診
- 30歳以上は、3年連続異常なければ2年ごと、または、HPV-DNA検査併用で異常なければ2から4年ごと。
定期的に子宮がん検診を受けてきて70歳になったら検診の終了を検討
当院は二次検診施設となっておりますので公費助成での子宮頸がん検診をご希望の方はお近くの産婦人科クリニックにご相談ください。検診で要精検となりましたら二次検診施設の当院へお越しください。当院では自費での子宮頸がん検診と健康保険適応での子宮頸がん(精密)検査を取り扱っております。子宮頸がんワクチン接種は、尼崎市医師会委託医療機関(尼崎市ホームページに掲載)で受けられます。
外来医師担当表
学会認定
- 日本産科婦人科学会専攻医指導施設(総合型専攻医指導施設、基幹プログラムあり)
- 日本周産期・新生児医学会周産期専門医(母体・胎児)研修基幹施設
- 日本婦人科腫瘍学会指定修練施設(B)
- 日本女性医学学会認定専門医制度研修施設
- 日本産科婦人科内視鏡学会認定研修施設
- 臨床遺伝専門医制度研修施設
- 日本臨床細胞学会教育研修施設
- 日本母体保護法指定医師研修医療機関
トピックス
2021.12.8 ロボット支援手術について
2022年からロボット支援手術を開始しました。詳しくは担当医にお尋ねください。
2021.6.28 出生前検査について(動画閲覧方法の紹介)
当院では出生前検査を希望する妊婦さんのために出生前外来を開設しています。
詳しくは、診療内容 > 出生前外来 をご覧ください。
GeneTech株式会社により出生前検査に関する動画が公開されています。
(動画は予告なく閲覧できなくなる場合があります)
(https://www.youtube.com/watch?v=P1ykvOM68KY)
2021.6.25 腹腔鏡下仙骨腟固定術について
性器脱に対する手術療法として腹腔鏡下仙骨腟固定術を開始しました。
ご希望の方は担当医にご相談ください。
2021.6.25 分娩予約について
当院では現在分娩予約を制限させていただいております。
詳しくは、当院で出産をご希望の方へ > 分娩予約について をご覧ください。
2021.6.25 婦人科内視鏡外来について
婦人科内視鏡外来を開設しました。
詳しくは、診療内容 > 婦人科内視鏡外来 をご覧ください。