難聴・人工内耳

難聴・人工内耳

治る難聴・治らない難聴

難聴にも種類があります。一般に音が聞こえにくくなることを難聴といいますが、音は聞こえても言葉がわかりにくいといった症状も難聴といいます。音が聞こえにくいものを純音聴力の低下といい、純音聴力検査(いわゆる聴力検査です)で調べます。言葉が判りにくいものは、語音聴力の低下といい、語音聴力検査(ことばの聞き取り検査)で調べます。これらは、音や言葉が耳から脳に伝わっていく際に、どのあたりの働きが悪くなっているかをある程度推測する指標となります。下記のような点をできるだけ明らかにすることが難聴の診断・治療には大切です。

  • 突然の難聴なのか徐々に進行する難聴なのか?
  • 治るのか治らないのか?
  • 早期治療が必要なのかどうか? (治療の遅れにより悪化する疾患なのか?)

難聴に関する聴覚検査は、成人のみならず小児に対する検査も積極的に行っております。従来からの耳音響放射検査(DPOAE)・聴性脳幹反応(ABR)に加え、最新の他覚的検査機器である聴性定常反応記録装置(ASSR)を導入し、また言語聴覚士による行動観察や遊戯聴力検査装置を用いた検査も実施しています。
また、聴力改善を目的とした手術も積極的に行っており、慢性化膿性中耳炎や真珠腫性中耳炎といった中耳炎に対する鼓室形成術や、近年、日本人にも増えてきたといわれる耳硬化症に対するアブミ骨手術などに対応しています。これらの手術により聴力改善が期待できない、さらには補聴器をつけても言葉がわからない方を対象とする人工内耳埋込手術も施行しています。

人工内耳

平成21年4月より、当院は人工内耳埋込手術の施設認定をうけ、補聴器で効果の得られない両側高度難聴の方に対する人工内耳埋込手術を行っています。これにより、これまで補聴器を使っても言葉を聞き取ることができなかった方でも、手術により人工内耳を埋め込むことにより、聞こえを取り戻すことが可能となります。

ヒトはどのようにして、音を聞いているのでしょうか?

音は、空気の振るえです。空気の振るえは、ヒトの鼓膜を振動させます。その振動は、鼓膜から耳小骨というヒトの体の中で最も小さい骨を伝わって、最終的に内耳の中のリンパ液(蝸牛内)を振動させます。内耳は、リンパ液の揺れを電気信号に変えて聴神経に伝え、これが脳に伝えられて、音や言葉として聞こえることになります。

内耳の働きが悪くなる難聴は、生まれつきのものから老人性のもの、疾患によるものなど様々ですが、いずれも治療が難しく、治らないことがほとんどです。そこで、内耳のかわりに直接神経を電気刺激することによって、音が聞こえるようにするものが人工内耳です。音を単に大きく増幅する補聴器とは、仕組み的に大きく異なります。

人工内耳って、どんなもの?

人工内耳は、2つの部分からなっています。手術をして、体の中に埋め込む体内部分と体外部分です。体内部分は、電極を内耳の中にいれることによって、聴神経を電気刺激する部分です。体外部分は、ヒトの声や音をマイクでひろって、コンピューターで分析し、神経をどのように電気刺激するかを決める部分です。実際に体外部分を装着する場合も、従来の耳掛型補聴器とほとんどかわりません。人工内耳を身につけるには全身麻酔での手術が必要ですが、手術は中耳炎の手術とほぼ同じくらいの手術で、からだに大きな負担はありません。人工内耳の器械は高価ですが、健康保険が適応されます。特に、高度の難聴による身体障害者認定を受けておられる方は、さらに負担は軽くなります。(図、写真はコクレア社より提供)

人工内耳は、どのような方に適応となりますか?

人工内耳の手術は、両耳ともに、補聴器を使っても音や言葉を聞き取れない方に行います。補聴器を使って会話のできる方や、片方の耳が聞こえる方は対象にはなりません。成人は、特に年齢制限はありませんが、高齢の方は、全身麻酔が安全にできることが必要です。小児は、1歳6ヶ月以上が基本になりますが、成人と違いことばの習得や学習との関係がありますので、なるべく早く治療方針を立てる必要があります。また、手術だけでなく、その後のリハビリテーションがとても大切で、それには医師だけでなく、言語聴覚士が中心となって、きめ細かく対応させていただきます。

人工内耳で音を聞いたときの脳の働きについて:ポジトロン断層法による研究

人は音や言葉を聴いた時、脳の中で側頭葉という部分が活動します。私たちは、人工内耳を埋め込む手術を行った方が、音や言葉を聴いているときの脳の働きを、ポジトロン断層法(PET)という検査で調べました。すると、人工内耳を通して言葉を聴き、理解しているときには、健聴者の方が言葉を聴いたときと同じ部位が、健聴者の方と同じかそれ以上に働いていることがわかりました。一方、言葉というものは、幼小児期に獲得するもので、一定の年齢を超えると、獲得が難しくなるいことが知られています。生まれつきの高度難聴の方で、成人してから人工内耳手術を受けた方は、言葉の獲得が難しく、PET検査でも側頭葉の働きはほとんどないことがわかっています。


雑音や言葉を聴いたときの脳の血流。赤~黄色に光っている部分が、血流が増えた部分。

言語外来

当科では言語外来を開設しており、耳鼻咽喉科専門医の指示のもと、言語聴覚士が小児の耳、咽頭などの局所と個々の成長発達状態を総合的に評価した上で言語訓練を行っています。また、幼児聴力検査による難聴児の聴力評価のほか、人工内耳埋込術後のリハビリテーションにも対応しています。