- 新たな診療取り組み
膀胱がんについて
がんが膀胱の壁に深く入り込んでいる筋層浸潤膀胱がんでは、膀胱を全て摘出する根治的膀胱全摘除術が、根治を最も期待できる標準治療です。根治的膀胱全摘術では、転移の可能性があるリンパ節を摘出します(リンパ節郭清)。さらに、膀胱を摘出すると、尿を体外に導く通路を再建しなければなりません(尿路変向術)。
尿路変向術では、①回腸導管造設術、②尿管皮膚瘻造設術、③回腸利用新膀胱造設術などの方法があります。①②は腹部の尿路ストーマを造設する方法です。③はご自分の尿道から自然に排尿できる方法です。
従来からお腹を大きく切開する開腹による根治的膀胱全摘除術を実施してきましたが、この方法は出血量が1000mlを越えることも多く、腸閉塞や創部感染症などの合併症も比較的多いことが問題点でした。合併症がなく経過された場合でも、手術後の痛みが比較的強いため社会復帰に時間がかかる手術と言われてきました。
ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術(RARC)とは
腹腔鏡手術は開腹手術と比べて、お腹を大きく切開する必要が無く、出血の少ない明瞭な拡大視野で安全な手術ができることが最大の特徴です。ロボット支援手術は従来の腹腔鏡手術よりもさらに高解像度の3D画像を見ながら、人間の手の関節以上に柔軟かつ繊細に動くロボット鉗子を用いて手術を行うことで、精密な切開や縫合を行うことができます。
ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術は、ロボット支援手術の特徴を大きく生かせる手術であり、患者さんの周術期の負担が軽減することを期待できます。
ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術(RARC)の様子
当科でのロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術(RARC)
2018年よりロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術(RARC)は保険適用となりました。当科では2018年12月よりRARCを開始しました。従来の開腹手術と比べると、出血量が少なく、手術後普通の食事を再開できるのがより早く、入院期間がより短いなど、良好な結果を得ています。
ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術(RARC)の様子
ロボット支援腹腔鏡下根治的膀胱全摘除術(RARC)の様子
RARC導入直後では尿路変向手術を従来の開腹手術で行う施設がありますが、当科ではより低侵襲かつ安全性の高いRARCを目差し、導入直後から①回腸導管造設術と②尿管皮膚瘻造設術で全ての操作をロボット支援手術で行っています。将来的には③回腸利用新膀胱造設術もロボット支援下に行う予定としています。
尿路ストーマ造設術を受けられる予定のある患者様には、皮膚・排泄ケア認定看護師から手術前にオリエンテーションを行い、早期社会復帰を支援しています。
既往症や経過などから、RARCが治療適応とならない患者様もおられます。具体的な適応や治療方針などについては、お気軽に担当医にご質問下さい。