不整脈の薬物療法、非薬物療法
不整脈の治療方法として薬物療法がありますが、薬物療法は効き目が不十分なことが多く、高価で、副作用が多いというデメリットがあります。一方で、現在ではほとんどの種類の不整脈がカテーテル治療であるカテーテルアブレーションで治療できるようになっています。兵庫県立尼崎総合医療センターでは発作性上室性頻拍症、心房細動、心室性期外収縮、心室頻拍など多くの不整脈の患者さんにカテーテルアブレーション行って治療しています。また、徐脈性の不整脈はペースメーカー植え込み手術を行っています。
ここでは高齢者の不整脈として最も頻度が多く重要である心房細動に対するカテーテルアブレーションについて解説します。兵庫県立尼崎総合医療センターで行っている心房細動治療後の再発が少なくなるような工夫についても解説したいと思います。
心房細動について
心房細動は高齢者に多い不整脈として頻度の高い不整脈です。心房細動は心房の収縮力を弱めてしまうため、心房内血栓を作って脳梗塞を引き起こしてしまったり、心不全の原因となったりします。
心房細動のアブレーション
薬剤抵抗性のものが一番良い適応ですが、そうでないものも含めて現在は心房細動はアブレーション（心筋焼灼術）で治療することが多くなっています。これによって、不整脈の動悸症状、息切れなどの心不全の症状を劇的に改善することができます。アブレーション治療は通常、肺静脈という左心房についている血管に対して行います。その手法としては、先端に金属チップのついたアブレーションカテーテルで高周波通電により治療する手法とバルーンを用いて治療する方法があります。いずれにしても治療する部位としては肺静脈をターゲットとした治療です。
高周波カテーテルアブレーション
高周波カテーテルアブレーションは1点数ミリ程度の大きさしか治療することができないので、それを繰り返して肺静脈の周りを治療します。どのような血管に対しても治療ができる利点がある反面、治療時間がかかります。
バルーンアブレーション
バルーンアブレーションにはクライオバルーンという肺静脈を血管ごとに一気に冷却して治療する方法があります。この治療は僅かな回数での治療で終了するので短時間での治療が可能になります。速さを追求すれば一時間程度の治療も可能です。当院でも高周波アブレーションに負けない治療成績を得ております。この治療で発作性の軽い形態の心房細動であれば90％近い成功率があります。
それに加えて当院ではホットバルーンという治療法も行っております。これは日本発のアブレーション治療でクライオバルーンに加えて柔らかい大きなバルーンで治療できるので大きく変形した肺静脈でも治療可能です。ホットバルーンもクライオバルーンにまったく負けない治療成績があります。
慢性化した心房細動に対するカテーテルアブレーション
古くなった心房細動に対するカテーテルアブレーションはバルーン治療では限界があります。なぜなら心房細動は持続化すると肺静脈だけでなく左心房や右心房いたるところから出現するようになるからです。
そこで兵庫県立尼崎総合医療センターでは肺静脈以外の部分も一度目の治療から積極的に関与してなるべく再発しないよう尽力しています。
ケミカルアブレーション
兵庫県立尼崎総合医療センターの最大の特徴としてケミカルアブレーションがあります。この治療は通常の保険診療内の治療ではなく、倫理委員会の承認が必要なため、一般的な病院では導入できない治療法です。この治療法はマーシャル静脈という不整脈の原因になりやすい領域に対してアルコールを注入して不整脈が起こらないようにする治療法です。当院では他の病院での不成功症例も少なからずこの方法で治療することによって成功しています。
マーシャル静脈という2.0mm程度の細い血管にアルコールを注入します。
さいごに
不整脈のカテーテルアブレーションはどのような方法を用いても、いまだに再発が少なくない治療法です。そのためには誘発検査なども丁寧に行い、肺静脈だけでない原因部位を見つけ出し、適切な治療法で治療する必要があります。当院もその技術を磨く途上にありますが、出来る限りの治療をさせて頂きたいと思っていますので、状態にかかわらず気軽にご相談ください。兵庫県立尼崎総合医療センターでは不整脈専門外来を月曜から金曜まで毎日開いております。