脳神経内科

脳神経内科
最終更新日:2025年6月30日

脳神経内科

脳神経内科は脳や脊髄から成る中枢神経から、手足に分布する末梢神経や筋肉まで、頭のてっぺんから足の先まで張り巡らされた“神経”の病気を“内科的に”診療するところです。私たちの守備範囲は広く、脳梗塞や認知症、てんかんなどの比較的患者さんの多い疾患から、難病とされるパーキンソン病や多発性硬化症、ALSなど専門性の高い疾患、あるいは頭痛やしびれ、めまいなどの症状に対しても診断や治療を行います。

21世紀は「脳の世紀」とも呼ばれ、医学の発展とともに次々と新しい発見や治療薬の開発がなされています。かつては原因不明、有効な治療法もなかった神経疾患は「分からない、治らない」と揶揄されていましたが、それでも「あきらめない」神経内科医は患者さんの診療や研究を続けてきました。その先人達のおかげで、脳梗塞の血栓溶解療法、神経免疫疾患の分子標的薬、パーキンソン病のデバイス治療などが次々に開発され、近年ではアルツハイマー型認知症やALSなど治療法のほとんどなかった疾患にも新薬が登場しています。これからは“治る脳神経内科”に向けて、さらなる進歩が期待されています。

ただし、最新の治療を行うためには一人ひとりの患者さんを正しく診断することが何よりも重要です。そのため私たちは患者さんの体の隅々まで神経の診察を行います(小さなハンマーで叩いたりするアレです)。そのうえで必要な検査を患者さんごとに考えて提案いたします。中には現在でも治療の難しい疾患もありますが、どうしたら症状を和らげて、よりよく暮らしていけるか、患者さんやご家族と一緒になって考えていきたいと思います。

脳神経内科3つの柱

脳神経内科3つの柱の図解

科長ご挨拶

兵庫県立尼崎総合医療センター脳神経内科科長(兵庫県難病相談センター長) 上田 健博(うえだ たけひろ)よりご挨拶

脳神経内科という診療科にはまだ馴染みのない方もいらっしゃるかもしれません。日本語の「神経」という言葉から、心の働きをイメージされるかもしれませんが、私たちがみている「神経系」というのは脳と体中をつなぐ電線のようなものです。例えとしては、脳や脊髄がコンピューター(ハード)、神経系がケーブル、手足や臓器、組織が端末(ソフト)ということになります。患者さんの調子が悪いときに、私たちはこれらのどの部分が原因なのかを突き止めていきます。そして機械が故障したら修理になりますが、人間が病気になると内科的治療と外科的治療があります。手術などの外科的治療は脳神経外科の担当となり、私たちは投薬などの内科的治療を得意としています。自分の身体であっても神経系の働きというのは理解しにくいところもあります。だからこそ私たち脳神経内科医が、客観的な視点から患者さんの不調の原因や治療方針を一緒に考えていきたいと思っています。どうぞお気軽にアクセスしてください。

対象とする主な疾患

1.脳卒中、特に脳梗塞の急性期治療

2.パ-キンソン病、多発性硬化症など神経難病の包括的治療

3.物忘れの鑑別診断

4.けいれん・てんかんの急性期治療

5.髄膜炎、脳炎、脳症、ギラン・バレー症候群などの神経救急疾患

6.末梢神経・筋・脊髄疾患など

外来医師担当表

学会認定

  • 日本神経学会教育施設
  • 日本脳卒中学会教育研修施設
  • 日本認知症学会専門医教育施設
  • 日本てんかん学会てんかん専門医認定准研修施設
  • 日本臨床神経生理学会 教育施設(脳波分野)準教育施設(筋電図・神経伝導分野)

当科での取り組み

兵庫県難病相談センターとの連携

当相談センターは平成2年に旧尼崎病院に誘致されて以来30年が経ち、現在の病院でも1階北玄関を入ってすぐのところに設置されています。脳神経内科が中心となってこれまで毎年のべ4,000人の難病患者さんの医療相談にあたり、入退院や転院の調整、在宅支援、講演会や研修会の企画と実行などに携わってきました。平成26年に難病法が制定されて以降は300以上の難病に対する医療や福祉体制が整備されており、なかでも神経難病の患者さんとご家族に関しては当科でしっかりとバックアップして参ります。

院内デイサービス「ときの間」のご案内

旧尼崎病院にひき続き、当院7階東病棟に院内デイサービス「ときの間」を設けております。全身状態が安定した方を対象に、ケアマネージャー、介護福祉士、ヘルパー資格取得者などのスタッフが、食事介助、レクリエーション、体操、音楽療法、ビデオ鑑賞などを通じ、楽しみながら筋力アップや脳の活性化を促します。入院中の寝たきりやせん妄の予防、早期回復、認知面の低下予防にもなればと考えております。なお、「ときの間」の利用に当たって、特別な利用料はいただいておりません。

認知症疾患医療センターとしての活動

当院では脳神経内科と精神科が共同して認知症疾患医療センターを運営しています。もの忘れ外来では地域の医療機関からご紹介を頂いた患者さんについて、認知症の診断や治療方針の決定を行います。週1回の合同カンファレンスで患者さんの情報共有を行い、身体症状(脳神経内科)や精神症状(精神科)それぞれに対して専門的な意見交換をすることで、より高いレベルでの診療が可能となっています。専門の看護師や心理士、ソーシャルワーカーも介入して、認知症患者さんが地域での生活を安心して行えるようにサポートをしていきます。

遺伝カウンセリング

神経変性疾患は遺伝が原因であることも多く、近年では様々な遺伝子治療の研究開発も進んでいます。当科では遺伝性神経疾患の患者さんやご家族からの遺伝に関するご相談などがあれば、臨床遺伝専門医が認定遺伝カウンセラーと連携して遺伝カウンセリングにあたります。

チーム医療の取り組み

脳卒中ケアユニット(SCU)、せん妄・認知症サポートチーム(DDST)、結節性硬化症連携チーム(TSC BOARD)、摂食・嚥下ラウンド、栄養サポートチーム(NST)、呼吸器サポートチーム(RST)など神経症状に関わる様々な院内チームにおいて、他職種や他診療科との連携に積極的に取り組んでいます。

医療機器

  • MRI:3台
  • CT5:4台
  • 脳血流SPECTやSPECT-CT対応ガンマカメラによるDATscan
  • 脳卒中ケアユニット設置の頚動脈エコー
  • 脳波長時間持続モニター
  • 筋電計2台