消化器内科

消化器内科
最終更新日:2025年6月30日

消化器内科

<先進医療と全人的医療を目指して>

消化器内科は阪神地域の基幹病院として外科・放射線科とも密接に連携し集学的な高度先進医療を目指しています。

超高齢化社会の到来とともにこれからの疾患や病態の変化が予想され、消化器領域疾患では“高齢者救急病態への対応と、増加する“消化器癌”への対応が課題となります。

消化器救急病態

当消化器内科入院の半数が緊急・救急入院です。超高齢化社会を迎え消化管出血(薬剤性消化管障害・潰瘍、大腸憩室出血など)胆石症(胆嚢結石、総胆管結石、結石性膵炎など)腸閉塞(癒着性、糞便性、腫瘍性、S状結腸軸捻転など)の救急病態の増加しており、これらの病態が救急入院の2/3を占めています。

兵庫県立尼崎総合医療センターでは消化器内科は365日全日当直体制をとり、24時間随時の救急病態への迅速対応を行います。

消化器癌

超高齢化社会を迎え加齢と関連して“癌”が増加します。2019年度の消化器内科の新規癌入院患者数は352人です。消化器領域では今後大腸癌、膵癌、食道癌の増加が予想されます。

超高齢患者さんであればこそ消化器内科医の果たす役割が非常に重要となります。①癌の早期発見、低侵襲な内視鏡治療―食道癌・胃癌・大腸癌のESD・EMRなど ②放射線科との連携のもと化学放射線療法など低侵襲な集学的医療 ③進行・終末期病態での緩和的医療-減黄術、消化管狭窄解除術などのマネジメントです。

いずれも亜急性期病院、療養型施設、個人開業医院などと十分に連携して地域が一体となって取り組まなければならない課題です。今後の超高齢化社会の中で医療難民・癌難民がでないように、阪神・尼崎地域に応じた包括的な医療体系を構築していく必要があり、兵庫県立尼崎総合医療センターはその中心的役割を果たす必要があると考えています。

消化器内科6つの柱

消化器内科6つの柱の図解

ご挨拶

高齢化社会の到来とともに、昨今、消化器病でも癌や救急疾患の増加が起こっています。これに対し当科では、高齢者の癌を早期発見し、体に負担の少ない治療を行うよう心掛けています。また、腹痛、吐下血などの救急疾患にも、24時間365日体制で対応しています。さらに、消化器疾患全般に対し、外科、放射線科、腫瘍内科とも連携を密にとり、最善の治療が提供できるように努めています。その上に、患者さんに寄り添い、QOLを重視した、患者さん個々にあった治療も行うようしています。

当科が取り扱う疾患としては、消化管疾患としては、早期消化管癌の診断と内視鏡治療、カプセル内視鏡・バルーン内視鏡による小腸疾患の診断、炎症性腸疾患の治療、進行癌の化学療法や緩和治療などです。肝臓疾患としては、ウイルス性肝炎、いろいろな原因の肝障害、肝硬変、肝癌などに対応しています。胆膵疾患は、胆道膵の炎症性、腫瘍性疾患などに対し、内視鏡や薬物を用いた治療を行っています。また、急性腹症、消化管出血、腸閉塞、閉塞性黄疸などの救急疾患に対し、年中無休で診療に当たっています。検査・治療を行うに際には、積極的に鎮静剤を使用し、苦痛を軽減させるようにしています。

当科はチーム一丸となって、尼崎・阪神地域の社会的ニーズに沿った診療に携わっていくよう努力しています。

対象とする主な疾患

消化管疾患 — 食道・胃・小腸・大腸 全消化管の診断・治療体制

“苦痛の少ない、精密・正確な診断”をモットーとして上部・下部消化管内視鏡検査をおこなっています。

セデーション下(鎮静剤を少量使用し、うとうとした状態の間に検査を行なう、いわゆる無痛性内視鏡検査)での検査をお勧めしています。検査後十分な覚醒まで休んでいただくリカバリーベッドを18ベッド準備しています。御希望があれば経鼻内視鏡(極細径スコープ)を使用した検査もおこなっています。

OLYMPUS社LUCERA-ELITEシステムでNBI詳細拡大観察も随時併用し、食道や大腸の病変の精細診断を行い癌の早期発見、病変の正確な範囲・深達度診断を目指しています。

また内視鏡センターでは画像をセンターモニター化して検査中の画像をリアルタイムに複数の内視鏡医が確認診断することで診断と安全性の向上を図っています。

またカプセル小腸内視鏡、ダブルバルーン・シングルバルーン小腸内視鏡を導入し、小腸病変への精査・治療体制を整えています。(2017年4月からOLYMPUS SF290シングルバルーン内視鏡を導入し、より簡便な小腸検査・術後胃症例の胆道アプローチの体制を整えました。)

カプセル小腸内視鏡検査はビタミン剤のような形状のカプセルを飲み込むだけで小腸全域を自動撮影する楽な検査で、小腸の出血性病変を見つけ出すのに有用です。バルーン小腸内視鏡は通常の胃カメラや大腸カメラで届かない小腸病変の診断・治療(止血、ポリペクトミーなど)に有用です。

内視鏡治療(早期食道癌・胃癌・大腸癌に対するESD・EMR、胃・食道静脈瘤に対するEIS・EVL、胃・大腸腫瘍に対するEMR・ポリペクトミーなど)も積極的におこなっています。

胆膵疾患 — 診断から治療まで

高齢化社会を迎え胆膵領域の疾患(腫瘍、結石症など)は増加しています。

胆膵領域ではERCPによる診断および経乳頭的治療(減黄術、EST、EPBD、EPLBD、採石術、ステンティングなど)多数手がけています。巨大総胆管結石はラージバルンを使用して一期的経乳頭的に採石を行なっています。胃手術例(R-Y再建胃症例の総胆管結石症例など)でも経皮的なインターベンション(PTCDなど)やシングルバルーン内視鏡(2017年3月導入)やダブルバルーン小腸内視鏡などを用いる内視鏡治療を組み合わせて工夫した治療をおこなっています。

〈新病院消化器内視鏡センターの特徴〉

  • 6室の内視鏡検査・治療室と18ベッドのリカバリーベッド
  • 専用X線透視室を並置・・随時のERCP/PTCDが可能
  • 検査室すべてにCO2配管し、CO2送気による検査治療体制
  • 映像のセンター化・・全室の映像をセンターでモニターし、診断の正確性、検査・治療の安全性を確保
  • ERから搬送の緊急内視鏡処置患者さんへの迅速対応体制

肝疾患 — テーラーメイドの治療

発癌予防のためには背景肝障害の主たる原因であるB型、C型肝炎ウイルスに対する抗ウイルス療法は重要です。近年C型肝炎ウイルスに対する治療は劇的に進歩しており、インターフェロン(IFN)を使用しないIFNフリー治療で90%以上の症例で治癒可能となっています。ウイルスのタイプや薬剤耐性変異の有無などを十分に検討し最適な薬剤選択を行い薬剤部と連携し十分な薬剤指導を行うことで治療成績の向上に努めています。

IFNフリー治療により高齢かつ線維化が進行した高発癌リスク群が多く治療対象になっているためHCV排除後も肝発癌に対するフォローアップを行う必要があるため地域の先生方と連携を取りながら併診の形で一人一人の患者さまをフォローしています。

肝癌の早期発見、早期治療のために腹部超音波検査、腹部造影超音波検査、CT、MRIなど各種画像診断を組み合わせたきめ細かいフォローをしています。肝癌の治療として外科、放射線科と連携し、患者さまの病状に応じて肝切除、肝動脈塞栓術、ラジオ波焼灼療法などを選択し組み合わせることで患者様ごとにテーラーメイドの治療を提供できるように、またラジオ波焼灼療法では体位変換がしやすく人工胸水作成などに便利なラジオ波治療専用ベッドを使用し、造影超音波検査、CT画像を合わせたFusion imagingを併用することでより正確な治療が出来るように努力しています。

またRFAをより安全に正確に施行するために通常の超音波検査で描出困難な例では造影超音波検査やReal-time virtual sonography(あらかじめ撮像したCTやMRI画像を記憶させ、超音波画像と同一断面のCT画像を画面上に並べてリアルタイムに表示させるシステム)併用しています。

〈新病院消化器内科病棟(11E) 肝疾患治療専用室〉

  • 新病院の消化器内科病棟に専用の肝疾患治療室を設けました。ここには治療専用特殊ベッドと専用の超音波装置を設置して、病変の位置に応じた体位変換と人工胸水作成時の穿刺治療を容易にし、また通常の超音波検査で描出困難な例に対しては造影超音波検査やCT画像を合わせたFusion imagingを併用することでRFAやPEIT治療をより安全・正確に出来るように工夫しています。

外来医師担当表

学会認定

学会認定指導教育施設として下記の指定を受けています。

  • 日本消化器病学会
  • 日本消化器内視鏡学会
  • 日本肝臓学会
  • 日本超音波医学会
  • 日本炎症性腸疾患学会