外来患者
2015年7月1日新病院開設以降、2016年11月までの小児循環器内科外来受診者数は延べ9702人で、疾患の内訳は、以下に示すとおり、先天性心疾患が78%を占める。その次に、学校健診等で抽出された心室期外収縮などの不整脈が13%、冠動脈後遺症を残した川崎病が4%、僧帽弁逸脱などの僧帽弁疾患、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、心臓腫瘍などの心筋疾患が2%を占める。その他には、Marfan症候群(7例)や特発性肺動脈性肺高血圧症(1例)が含まれる。
先天性心疾患の内訳は、以下の通りである。VSD、ASDが約半分を占めるが、ファロー四徴や完全大血管転位、単心室循環、修正大血管転位、総動脈幹遺残、左心低形成症候群などの複雑心疾患が相当数含まれる。
先天性心疾患病名 | n | % |
---|---|---|
心室中隔欠損 | 816 | 38.9% |
心房中隔欠損 | 394 | 18.8% |
ファロー四徴 | 187 | 8.9% |
肺動脈閉鎖/心室中隔欠損 | 26 | 1.2% |
肺動脈狭窄 | 122 | 5.8% |
動脈管開存 | 100 | 4.8% |
完全大血管転位 | 75 | 3.6% |
大動脈弁狭窄/閉鎖不全 | 66 | 3.1% |
大動脈縮窄/離断 | 65 | 3.1% |
房室中隔欠損 | 60 | 2.9% |
単心室 | 40 | 1.9% |
両大血管右室起始 | 39 | 1.9% |
総肺静脈還流異常 | 33 | 1.6% |
修正大血管転位 | 20 | 1.0% |
エプスタイン | 15 | 0.7% |
純型肺動脈閉鎖/狭窄 | 14 | 0.7% |
三尖弁閉鎖 | 12 | 0.6% |
総動脈幹遺残 | 9 | 0.4% |
左心低形成症候群 | 6 | 0.3% |
入院患者
2015年新病院開設以降、2016年11月末までの小児循環器内科入院患者数は、延べ467人で、その内訳は、新生児期の緊急入院(胎児診断例を含む)、心臓カテーテル検査・治療のための待機的入院、乳児期から成人期の心不全、不整脈や続発症による緊急入院である。
新生児期の緊急入院
新生児期の緊急入院33例中、胎児診断例は18例(54%)で、胎児診断率は未だ低く、産婦人科施設への胎児心エコー図検査の啓蒙が必要と考えられる。以下に新生児期入院を二心室修復可能例と二心室修復不能例に分けて示す。
新生児入院症例(二心室修復可能)
大動脈縮窄/離断あり | 5 |
心室中隔欠損 | 2 |
タウシッヒ・ビング症候群 | 1 |
大動脈肺開窓 | 1 |
房室中隔欠損 | 1 |
大動脈縮窄/離断なし | 22 |
心室中隔欠損 | 4 |
動脈管開存 | 2 |
総肺静脈還流異常 | 2 |
両大血管右室起始 | 4 |
肺動脈閉鎖/心室中隔欠損 | 3 |
完全大血管転位 | 2 |
ファロー四徴 | 2 |
総動脈幹遺残 | 1 |
エプスタイン | 1 |
純型肺動脈弁閉鎖 | 1 |
Total | 27 |
新生児入院症例(二心室修復不可能)
大動脈縮窄/離断あり | 1 |
左心低形成症候群 | 1 |
大動脈縮窄/離断なし | 4 |
単心室 | 1 |
三尖弁閉鎖 | 1 |
両大血管右室起始症 | 1 |
純型肺動脈弁閉鎖 | 1 |
Total | 5 |
心臓カテーテル検査・治療
2018年1月から12月までの心臓カテーテル件数は142件、そのうちの心臓カテーテル治療件数は68件であった。
心臓カテーテル治療件数(2018年)
心臓カテーテル治療件数(2018年)*一部重複あり | ||
弁形成術 | ||
大動脈弁 | 1 | |
肺動脈弁 | 7 | |
血管拡張術/心房中隔拡大術 | ||
肺動脈狭窄 | 20 | |
心房中隔 | 1 | |
上大静脈狭窄 | 4 | |
フェネストレーション | 2 | |
腸骨静脈 | 1 | |
Static BAS | 2 | |
ステント留置 | ||
BT shunt | 1 | |
フェネストレーション | 1 | |
コイル/VP塞栓術 | ||
側副血管 | 14 | |
フェネストレーション | 1 | |
経皮的閉鎖術 | ||
心房中隔欠損 | 9 | |
動脈管開存 | 4 | |
total | 68 |
乳児期から成人期の緊急入院
8例の緊急入院があり、乳児例では、DCM、僧帽弁腱索断裂、大動脈縮窄、三心房心、小児例では、12歳の心筋炎(PCPS装着)、成人例では、PA/VSD心内修復術後遠隔期症例の感染性心内膜炎、完全大血管転位大動脈弁再弁置換術後症例の出産後人工弁機能不全による左心不全、完全大血管転位姑息手術後症例の喀血であった。
成人先天性心疾患(ACHD)診療について
当院は、旧尼崎病院において昭和43年から先天性心疾患の手術が行われていた歴史を引き継いでおり、小児循環器内科を受診する成人例は全体の約3割を占めている。そして、今後、年々増加してゆく事は必至である。これに対し、当院においては、将来ACHD専門科ができるまで、18歳以降のACHD症例については、小児循環器内科が循環器管理を行い、心臓外科、循環器内科、その他各専門科と協力して治療にあたることが望ましいと考えている。
心房中隔欠損・動脈管のカテーテル治療
先天性心疾患である心房中隔欠損症や動脈管開存症は主に小児期に治療が必要となることが多いですが、近年では成人になってから発見され、手術が必要となる症例も増えています。従来は外科的に胸を開いて閉鎖する手術が行われていましたが、形態が適応すればカテーテルを用いて閉鎖する治療が可能です。これらを経皮的心房中隔欠損閉鎖術および経皮的動脈管開存閉鎖術と言いますが、術後の痛みが全くなく、術後3日で退院可能な低侵襲治療です。小児はもちろん、成人も治療可能で、最近では、高齢者の症例も増えつつあります。
経皮的心房中隔欠損閉鎖術
心房中隔欠損閉鎖栓を図1のように、カテーテルを通して留置し、閉鎖する手術です。
[経皮的心房中隔欠損閉鎖栓]
[図1:経皮的心房中隔欠損閉鎖術]
当科では、2009年から開始し、現在2017年3月まで94症例に施行してきました。施行年齢は、5歳から20歳までの小児期が最も多いですが、65歳以上の高齢者も治療しています。(図2)
[図2:経皮的心房中隔欠損閉鎖術の年齢分布]
治療成績ですが、2014年からは全例閉鎖できています。現在のところ、脱落や穿孔などの合併症は ありません。(表1)
2009年〜2013年 | 2014年〜2017年3月 | total | |
---|---|---|---|
症例数 | 63 | 31 | 94 |
成功数 | 57 | 31 | 88 |
成功率(%) | 90 | 100 | 94 |
経皮的動脈管開存閉鎖術
右図に示すように動脈管閉鎖栓を動脈管に留置し閉鎖する手術です。
[動脈管閉鎖栓]
[経皮的動脈管開存閉鎖術]
当科では、2010年から開始し、2017年3月まで36症例に施行してきました。
施行年齢は、一歳以下が多いですが、経皮的心房中隔欠損閉鎖術と同様に、50歳以上の成人期にも行われています。(図3)
[図3:経皮的動脈管開存閉鎖術の年齢分布]
治療成績ですが、2015年からは全例閉鎖できています。現在のところ、脱落などの合併症はありません。(表2)
2009年〜2013年 | 2014年〜2017年3月 | total | |
---|---|---|---|
症例数 | 19 | 17 | 36 |
成功数 | 17 | 17 | 34 |
成功率(%) | 89 | 100 | 94 |
地域の先生方へ
心房中隔欠損および動脈管開存は、成人期に見つかることが珍しくありません。そのような場合にも、成人先天性心疾患外来へご紹介頂ければ、治療を計画させて頂きます。