- 新たな診療取り組み
消化器外科医長 吉川潤一(2017年6月末退職)
消化器外科部長 白潟義晴
消化器がん手術の最高難度手術
肝門部領域胆管(かんもんぶりょういきたんかん)がんとは肝門部領域、つまり肝臓の入口のあたりにできた胆管がんを指します。肝臓の入口には、胆管、肝動脈、門脈が複雑に入り組んで走行しており、この部位の胆管にがんができた場合、手術は極めて複雑で、高度な技術を要します。
肝臓、胆道、膵臓の解剖
胆道の解剖
肝門部領域胆管がんの術前3D-CT画像
手術は、肝臓全体の1/3以上の肝臓を切除し、胆管をできる限りたくさん切り取ります。その際、門脈や肝動脈といった肝臓を栄養する重要な血管を傷つけずに胆管だけを切り取る必要があり、消化器外科手術の最高難易度手術です。特に、がんが肝動脈や門脈に食い込んでいる場合は、血管合併切除再建(門脈や肝動脈も切除して、それらの血管を縫い合わせて血流を再開する)を同時に行います。肝動脈と門脈を同時に切除し再建する手術には生体肝移植と同等の技術、場合によってはそれ以上の技術を要します。そのため、肝動脈および門脈の同時合併切除再建を伴う肝門部領域胆管がん手術を施行できる施設は、国内でも限られています。大学病院でもできない病院が多々ある中、当センターはその手術を得意としています。
病院の総合力の象徴
肝門部領域胆管がん手術は、多くの職種、科の総合力で行う手術です。手術前は、消化器内科および放射線科と協力して診断し、病棟で看護師、理学療法士と共に術前準備をします。手術では消化器外科が主体となり手術を行いますので、消化器外科メンバー全員の協力はもちろんのこと、麻酔科医師、手術室看護師、脳神経外科山田圭介先生(顕微鏡下手術指導)の並々ならぬ協力があります。さらに手術後は、ICUで看護師、薬剤師、理学療法士と共に細やかな術後管理やリハビリを致します。特に複雑で高度な血管の切除再建行う場合は24時間を超えることもあり、スタッフ全員の理解と協力あってこその医療と言えます。それゆえ、総合力がなければ行えない手術であり、『病院機能の高さを表す』と言っても過言でありません。
世界一の肝門部領域胆管がん手術施設を目指して
当センターは、肝門部領域胆管がん手術において全国でも名を知られた施設です。2015年は外科の最大学会である外科学会のシンポジウム講演にて、2016年には臨床外科学会ワークショップ講演において、手術の質や高度さに対して非常に高い評価を受けました。また最近では2017年4月にも外科学会のシンポジウムで講演致しました。その際も、世界的に著名な外科医から世界に誇れる内容であると極めて高くご評価いただきました。このような大きな学会にて特別な発表の場を与えられ、評価を受けている医療機関は、大学病院あるいはがんセンターがほとんどです。近年、西日本でこのような高い水準の発表を継続している施設は当センターのみです。
現在、肝門部領域胆管がん手術の年間手術数の日本一かつ世界一の施設は名古屋大学附属病院ですが、今後も更なる努力を続け、いずれは目標である名古屋大学附属病院に肩を並べ最高の最先端医療を皆さんに提供できればと思います。
手術室のメンバー
(奥)船本看護師、天王寺谷看護師、山田医師、白潟医師、進藤医師、村上医師、木山医師
(手前)篠田看護師、吉川医師、貴傳名看護師、尾山看護師