手外科

手外科

手外科は、肘から手指までの上肢に何らかの障害や症状のある、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い患者さんが対象です。すなわち手指あるいは上肢の変形や機能障害、および腕神経叢以遠の末梢神経障害/損傷が対象となります。

外傷(急性期):骨折、腱損傷、血管損傷、神経損傷、切断指肢、重度四肢開放骨折、腕神経叢損傷

指、手首や肘の骨折、捻挫など“けが”に起因した上肢の症状。疼痛,しびれや指や腕が動きにくいといった運動障害です。皮膚欠損/骨欠損/血管損傷を伴うような重度四肢開放骨折に対してマイクロサージャリーや仮骨延長法を用いた先進的治療を施行しております。

腕神経叢損傷は以前はバイク事故によるものが多くありましたが、最近は減少傾向です。しかし肩関節脱臼/骨折に伴う腕神経叢損傷が最近増加傾向にあります。肩関節周囲外傷後に肩腱板が原因ではなく、腕神経叢障害が原因で肩挙上障害が出現することがあります。MRI、神経伝導速度検査、針筋電図等の検査が必要で、受傷後3-4ヶ月の時点で神経移植や神経移行術を行います。

外傷後遺症(慢性期):手指欠損、骨折変形治癒/偽関節

けがの後ある程度良くなったが、疼痛やしびれが続く、手指、手関節、肘関節が動きにくい、動かすと痛みが出る症状です。母指、指再建には遊離血管柄付足趾移植、wrap around flap、肋骨骨軟骨移植などを行っています。舟状骨骨折難治性偽関節に対しては血管柄付骨移植を行っています。

代表例

舟状骨骨折
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慢性疾患:リウマチ関連疾患、手/肘/指変形性関節症、母指CM関節関節症、TFCC損傷、手根管症候群、キーンベック病、テニス肘など

指関節痛/拘縮、手関節痛、肘関節痛でお困りの患者さん。患者さんの状態に合わせて様々な治療法を提供しています。人工関節置換術(肘関節、手関節、指関節)、関節鏡(手、肘、母指CM関節)手術なども駆使して治療しています。リウマチ関連疾患および重度の変形性手関節症に対する人工手関節置換術も実施可能になりました(参照「人工関節外科外来」)。

指変形性関節症(ブシャール結節、ヘバーデン結節)は最近TV CM等でよく聞こえてくる疾患となってきました。原因は不明ですが、発症が40才以上の更年期の女性に多く、女性ホルモンとの関係も示唆されています。ブシャール結節(指の第2関節:PIP関節)中等症には浅指屈筋腱の切腱術を、進行例にはシリコン一体型インプラントを使用した人工指関節置換術を実施しています。また、ヘバーデン結節(指の第1関節:DIP関節)の疼痛が強い例には関節固定術を実施しています。疼痛は強いが変形が少ない例には人工指関節置換術も実施いたします。

スポーツ障害:野球肘、靱帯損傷、TFCC損傷など

保存的治療、手術的治療の両方を患者さんのコンディションとあわせ、よく検討して決定しています。肋骨骨軟骨移植、関節鏡手術も施行しています。

代表例

母指MP関節靱帯損傷TFCC損傷野球肘
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デュピュイトラン拘縮:手のひらから指にかけてしこりができ、病気の進行に伴って皮膚がひきつれて、徐々に指が伸ばしにくくなる病気です。

酵素注射療法(ザイヤフレックス®)が2015年9月より本邦で施行可能となりましたが、現在供給が停止中です。そのため、従来通りの手術療法が中心となります。

代表例

デュピュイトラン拘縮
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上肢先天性障害(重複母指、内反手、ぶらぶら母指、先天性橈尺骨癒合症、裂手など)

生まれつき手指や腕といった上肢に先天的な障害がある赤ちゃんや子供さん。先天性橈尺骨癒合症では3Dシミュレーションにより骨切りガイドを作成の上、骨切り手術と授動術を施行しています。

代表例

合指症母指多指症握り母指症斜指症
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手外科の代表的な疾患はたくさんありますので、日本手外科学会ホームページ“一般の皆様”“代表的な手外科疾患”を参照していただければと思います。

診察/診断

レントゲン、CT、MRIなどの様々な検査機器を駆使し、手外科専門医が症状のあるところを触診し、問題となっている原因が関節にあるのか、筋肉や腱にあるのか、筋肉を動かす神経にあるのかを診断します。

治療

手の構造は非常に微細で、またその機能は繊細ですので、手術には手術用顕微鏡や拡大鏡を用いた大変細かい手術技術(マイクロサージャリーといいます)を用います。切断された指肢を再接着したり、無くなってしまった体の部分を他の体の場所から移植して再建したりします。機能的(つかむ、握るなどの機能)にも、外観や整容的にも心配りをしながら治療にあたります。

患者さんが困っておられる症状をお聞きして、たとえ元通りにはならなくても、どうすれば使いやすい手になるのか、じっくりと話しあって治療方針を決めるようにしています。

リハビリ

手術とリハビリは手外科の両輪で、どちらがうまくいかなくても治療成績は満足いくものとなりません。どちらも大変重要です。入院中は院内でしっかりリハビリを行い、外来リハビリは連携病院の大隈病院で継続してリハビリを実施しています。毎週木曜日はハンドセラピー実施時に、松本医師とハンドセラピストが話し合いながら治療にあたっています。

入院期間は、小さな手術は日帰り手術や一泊入院で手術しますが、長期のリハビリや数回にわたる手術を要する場合は長期入院を必要とします。