人工関節外科外来(担当:和田山医師・小林医師)
股関節・膝関節併せて111例の人工関節置換術を行っております。人工股関節症例の主たる原因は変形性股関節症、大腿骨頭壊死、股関節周辺骨折の後遺症です。大腿骨頭壊死は大腿骨の付け根に循環障害が生じ、骨が体重を支えきれずに潰れてくる疾患で、アルコール多飲とステロイド薬による治療を誘因とすることが多い疾患です。お酒をよく飲んだり、ステロイド治療を受けておられて、股関節の痛みを感じた場合には大腿骨頭壊死の可能性があります。レントゲンでは初期病変が見逃される事がありますが、MRIを撮れば診断可能です。人工膝関節の原因疾患はO脚(内反膝変形)の特に女性の方の加齢現象である変形性膝関節症が多く、他に関節リウマチや膝周辺の骨折の後遺症、半月板や靱帯損傷の後遺症があります。
骨切り術について
O脚(内反膝変形)で関節の破壊の程度がそれほど強くない例では人工関節ではなく、膝関節のすぐ下で脛骨の骨切りを行い、O脚を矯正する骨切り術が有用です(脛骨高位骨切り術)。また臼蓋形成不全(骨盤の骨の発達が不十分なために、股関節のバランスが悪くなった状態)が原因で初期の変形性股関節症となった方に対しては骨盤骨切り術を他院の医師にご指導を仰ぎながら行っています。
人工関節について
人工関節に関しては、当科では30年以上の歴史があります。人工関節は年数を経過すると中に入れた人工物(インプラントと言います)が、摩耗したり、骨との間に緩みが生じたりする不具合が生じることがあります。当院では人工関節の長期成績向上のため、鋭意努力を続けておりますが、それでも経年的に人工関節が傷んでくる症例が存在します。その場合入れ替えの手術(再置換と言います)が必要になる場合があります。当院でも歴史を積み重ねるに従い再置換の症例が増えてきました。再置換術を行なうに当たっては、症例により骨欠損の補填が必要な場合があり、その場合の同種骨(手術の際に他の患者さんの不要になった骨)の調達がネックとなっていましたが、平成18年6月に院内ボーンバンクを設立し、この問題を解消することが出来ました。しかしながら人工関節の手術には合併症も多く、整形外科だけではなく循環器や呼吸器、内分泌といった全身の状態を管理が大切です。当院にかかりつけの患者さんの多くは色々な合併症を持っておられることが多いため、各科の協力のもと安全に手術を行うことを目指しています。
2018年12月より人工股関節は前方アプローチを導入します。前方アプローチは筋肉を含めた股関節周囲軟部組織の損傷が他のアプローチより少ないため、術後の早期回復が期待できます。人工股関節前方アプローチについては和田山(月・水)外来でお尋ねください。
人工肘関節、人工手関節、人工指関節について
これらの人工関節置換術は、主にリウマチ関連疾患の患者さんが対象になりますが、外傷後あるいは変形性関節症に対しても患者さんの状態に適合した人工関節置換術を実施しています。これらの部位の痛みやお悩みのある患者さんは一度、手外科専門医(松本医師 火・木)にご相談ください。(手外科のページ参照)
※手関節の人工手関節置換術に関しては2017年11月から可能となりました。日本手外科学会が作成した適正使用指針を遵守し、手外科専門医の講習受講が義務づけられています。