対象とする主な疾患

乳がん

マンモトーム生検

針生検で診断が確定しない場合や、小さな病変、微細石灰化病変、腫瘤を形成しない病変などに対しては、マンモトーム生検という太い針での組織検査を行っています。
マンモトーム生検は、目標とする病変(腫瘤や微細石灰化など)の近くに針を進め、吸引しながら連続して組織を採取する優れた検査法です。
乳房超音波(エコー)検査で観察しながら行うエコーガイド下マンモトーム生検と、マンモグラフィ撮影で観察しながら行うステレオガイド下マンモトーム生検があります。
太い針を刺入するため皮膚を一か所だけ約4mm切開しますが、局所麻酔を十分に行いますので、ほとんど痛みはありません。皮膚の縫合は必要なく、傷跡もほとんど残りません。所要時間は10-20分程度で外来診療として行っており、翌日からのお仕事も可能です。

術前検査

乳がんと確定診断された場合、CTおよびMRI検査を行います。CT検査では、がんの皮膚、大胸筋への浸潤の有無、リンパ節の腫大の有無、肺や肝臓への転移の有無を調べます。MRI検査では、乳房内でのがんの広がり程度や多発病巣の有無などを調べます。進行乳がんでは、PET検査により骨転移を含めた遠隔転移の有無を調べます。

手術

乳房温存手術(乳房部分切除術)を基本とし、根治性と整容性の両立に努めています。温存手術では、がんの辺縁から全周性に0.5-1cm離して乳腺を切離し、がんの形状や進展範囲により円状部分切除または扇状部分切除を行っています。温存した乳腺の断端にがんの取り残しがないことを、迅速病理診断(手術中の顕微鏡診断)で確認しています。温存手術の適応は、がんの大きさが3cm以下ですが、整容性が保たれる場合はもう少し大きな場合にも行っています。また、がんが3cmよりも大きい場合に温存手術を希望される方には、術前化学療法(術前抗がん剤療法、後述)を3-6ヶ月行い、がんの縮小後に手術を行うことにしています。現在、当科では年間乳癌手術件数は150-180件で、そのうち約60%に乳房温存手術を施行しています。

乳房温存手術を施行した場合は乳房内再発を予防するため、手術の約2週後から温存乳腺に対して計25回~30回の放射線照射を行っています(計50~60グレイ、25日間~30日間)。照射は数分間で終了し、すべて外来通院で受けていただくことができます。

がんが大きく抗がん剤を使用しても縮小しない場合、広範囲進展や多発病巣のため乳房温存手術の適応のない場合、乳房温存手術を希望されない場合には胸筋温存乳房切除術(乳房切除術)を施行しています。

入院期間は、乳房温存手術で約1週間、乳房切除術で約10日間です。

乳房再建手術

形成外科との合同手術により、人工物あるいは自家組織を用いた乳房再建手術を行っています。人工物はテッシュエキスパンダーとシリコンインプラントを使用し、自家組織はお腹の筋肉・脂肪(腹直筋皮弁)や背中の筋肉・脂肪(広背筋皮弁)を用い、いずれも保険診療として行っています。乳房切除術と再建を同時に行う一次再建と、乳房切除術の半年後以降に再建する二次再建があります。

乳頭乳輪の温存が可能な場合には、再建に先立ち乳頭乳輪温存乳腺全摘術を施行しています。

乳房再建手術後の乳頭乳輪再建手術についても当院形成外科で行っています。

センチネルリンパ節生検

乳がんは進行すると、わきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)に転移することが知られています。最初に転移をきたすリンパ節のことをセンチネルリンパ節(見張りリンパ節)といいます。当院では、手術中に色素と蛍光を用いてセンチネルリンパ節を同定して摘出し、迅速病理診断(手術中の顕微鏡診断)で転移の有無を診断しています(センチネルリンパ節生検)。転移がない場合はリンパの切除(腋窩リンパ郭清)を省略し、転移がある場合はリンパの切除を行っています。不必要な腋窩リンパ郭清を省略することにより、手術後の腕や手の浮腫(むくみ)、しびれ感や痛みなどの後遺症を防ぐことができます。

術前化学療法

がんの縮小により乳房温存手術が可能となることを目的としていますが、目に見えない小さながん細胞(微小転移)にも効果が期待できる治療法で、再発予防目的で手術後に行う化学療法(術後抗がん剤療法)と同等の生存率が得られており、積極的に進めています。術前化学療法を受けられた患者様の約60%に、乳房温存手術が可能になっています。

抗がん剤治療は外来通院で、ゆったりとしたスペースのある外来化学療法室で受けていただいております。

術後補助療法

手術後に、再発予防目的で行う治療法のことを術後補助療法といいます。
世界の乳がん治療専門医が一同に会するザンクトガレン会議で推奨される標準療法や日本乳がん学会の診療ガイドラインに基づき、術後補助療法の方針を決定しています。
具体的には、ホルモン受容体発現の有無と程度、HER2発現の有無、リンパ節転移の有無と個数、Ki67値やその他の悪性度の指標、患者さんのご希望を元に、治療方針を決定し、化学療法(術後抗がん剤療法3-6ヶ月間)、内分泌療法(術後ホルモン療法5-10年間)や分子標的療法(トラスツヅマブ1年間)などの治療を外来にて行っています。

転移再発乳がん

生存期間の延長と患者QOLの向上を目指して治療とケアを行っています。乳房内再発、局所再発やリンパ再発に対しては、手術が可能であれば病巣の切除を行い、ホルモン受容体発現の有無、HER2発現の有無を確認します。骨、肺、肝臓などへの血行性転移・再発には、ホルモン療法や抗がん剤療法、分子標的療法(トラスツヅマブ、ペルツズマブ、T-DM1、ラパチニブ)などの薬物療法を行います。
骨への転移には、放射線療法(計30グレイ、10日間)やゾレドロン酸の点滴あるいはデノスマブの皮下注射を行います。脳への転移には、放射線科にてガンマナイフ治療、全脳照射を行うほか、摘出手術が必要な場合には脳神経外科を紹介致します。疼痛に対しての緩和ケア治療も行っています。

乳がん以外の疾患

乳腺良性腫瘍、乳腺症、乳腺炎についても診療を行っています。