パーキンソン病

基礎知識と療養のポイント

監修;兵庫県立尼崎総合医療センター 神経内科

パーキンソン病は神経難病の中で最も患者さんが多く、研究が進んでいる疾患です。研究の歴史も古く、1817年にイギリスのジェームス・パーキンソンが最初に患者を報告しました。この疾患は厚生労働省の指定難病です。

1.パーキンソン病はどんな病気?

どのくらいの患者さんがいるのでしょうか?人口10万人あたり100~120人の患者さんがおられます。発症年齢は50~60歳代で日本では男性よりも女性のほうが多いとされています。家族性(遺伝性)は5-10%で、大半は非遺伝性です。

2.パーキンソン病の主な症状

パーキンソン病の4大症状として「振戦(ふるえる)」「固縮(かたい)」「寡動・無動(おそい)」「姿勢反射障害(ころびやすい)」があげられます。これらは運動障害にあたります。手のふるえは歩行時には強くなります。

①運動障害
振戦(しんせん) ふるえのことです。
特徴として、何もしていない時にふるえる「安静時振戦」が見られます。手だけでなく、足や顎もふるえることがあります。
固縮(こしゅく) 筋肉の緊張が強くなり、手足の動きがぎこちなくなります。
関節が固くなり、他人が動かそうとしても抵抗があります。(歯車様)
寡動(かどう)、無動(むどう) 動作の開始に時間がかかり、動作そのものも遅くなります。
目のまばたきが減り、顔の表情が硬くなります。
字が小さくなります。(小字症)
姿勢反射障害 体を後方に押されると足が出ず、バランスを保持できなくなり、転びやすくなります。

これらにより、日常生活においては歩行が障害されたり(前傾姿勢、小歩、すり足、進行するとすくみ足や突進歩行)、手の動作が不自由になったり(書字やボタンかけが困難、食事困難)、表情が乏しくなったり(仮面様顔貌)、声が小さくなったり、動作がゆっくりになってきます。一人の患者さんにこれらの症状が、すべてが現れるわけではありません。

②非運動症状

嗅覚低下、便秘、頻尿や排尿困難、立ちくらみ、起立性低血圧、睡眠障害、記憶障害、うつ、幻覚・妄想などがあります。パーキンソン病の症状が身体全体に及ぶことがわかります。

2012年8月に兵庫県難病相談センターが行ったアンケート調査の結果、多くの患者さんが歩行や移動困難(56.6%)などを感じていました。また、便秘(60%)、体の一部が勝手に動く(=ジスキネジア45%)、会話困難(30%)物忘れ(30%)、よだれ(30%)、体の痛み(28.3%)、意欲低下(23.3%)、睡眠障害(21.7%)といった症状も多いことが分かりました。

他に睡眠障害(21.7%)、排尿障害(20%)、幻覚(15%)、たちくらみ(15%)もみられました。

病気の経過年数でみると、便秘やジスキネジア、歩行や移動の困難は発病4年以内の初期の患者さんでも感じることが多い反面、発病4年以内では立ちくらみは少なく、幻覚はありませんでした。

病気の経過年数により出現する症状が異なることが分かります。

3.パーキンソン病の病因

パーキンソン病は神経変性疾患に分類されます。

パーキンソン病ではα-シヌクレインというタンパク質の異常蓄積により、中脳黒質の神経細胞が少しずつ減少し、その機能が失われてくると考えられています。

それにより黒質とつながっている線条体のドパミンが欠乏し、症状が現れます。

発病のきっかけについては、遺伝的要因に神経毒などの環境因子が加わっておこると考えられていますが、まだはっきりと分かっていません。

4.パーキンソン病の診断

パーキンソン病は血液検査、脳のCTやМRIでは異常は現れません。

心臓の交感神経の状態を調べるMIBG心筋シンチで異常がみられることがありますが、アイソトープを使うため検査可能な医療機関は限られます。

診断は、症状から判断し、他の疾患ではないか、何かの薬の副作用ではないか、つまりパーキンソン症候群(※)でないかを除外していきます。

そのうえでパーキンソン病の薬を試してみて有効であればパーキンソン病と臨床診断します。

診断は専門の医師でも難しいことがあり、診断後も常に再評価が必要です。

※パーキンソン症候群・・・本態性振戦、パーキンソン関連疾患(進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症)、多系統萎縮症、レビー小体型認知症、特発性正常圧水頭症、脳梗塞、薬剤性、などパーキンソン病と症状は似ていても別の病気をさします。

5.病気の重症度分類

ヤールはパーキンソン病の重症度を以下の様に分類しています。

I度 障害は身体の片側のみで、日常生活への影響はほとんどない
II度 障害が身体の両側にみられるが、日常生活に介助は不要
III度 明らかな歩行障害が現れ、バランスを崩し転倒しやすくなる
IV度 日常生活の動作が自力では困難で、その多くに介助が必要
V度 車椅子またはベッド上で寝たきりで、日常生活では全面的な介助が必要

6.パーキンソン病の治療

残念ながら現時点では根本的に病気を治す治療はありません。

治療は脳内で不足するドパミンを補うLドパ療法や補助的な薬剤を使う薬物療法が中心になります。

他にも便秘や排尿障害などの非運動症状に対する治療も行います。

治療の目標は症状の緩和です。

薬の種類

パーキンソン病の薬には以下の種類のものがあります。

Lドパ(レボドパ) 脳内で不足するドパミンを補充する中核治療薬です。脳の中へとりこまれ代謝され、不足しているドパミンになります。早期から多量に使用すると後述する症状の日内変動などの運動合併症が出やすいとされ、服用に注意が必要です。ネオドパストン、メネシット、マドパー、イーシードパール錠などがあります。
ドパミンアゴニスト 脳内でドパミン受容体を刺激し、ドパミンのように作用します。Lドパに比べて作用時間が長く、症状の日内変動を軽くすることができます。ビ・シフロール、ミラペックス、レキップ(CR)錠など非麦角系と、パーロデル、ベルマックス、カバサール、カベルゴリン錠など麦角系があります。麦角系は心臓弁膜症をきたすことがあり、まず非麦角系から使用します。最近ミラペックスやレキップ(CR)錠など長時間作用する薬が使われています。またニュープロという貼り薬も新しく使えるようになり、皮膚からの吸収作用で症状の変動を小さくできる可能性があります。
アポモルフィン 非麦角系のドパミンアゴニストの注射薬です。既存のパーキンソン病薬の増量で十分な効果の現われないオフ症状に対し、レスキュー的に使用し、速やかな症状の一時的改善が期待されます。患者さんが自己注射をします。一日の注射回数は5回までで、注射の間隔は2時間以上あける必要があります。アポカイン注射薬があります。
抗コリン剤 ドパミン系が低下することで相対的に優位になった脳内のコリン系を抑制するために使用します。古くからアーテン、アネキトン錠などがあります。口渇・便秘・物忘れなどの副作用があります。
塩酸アマンタジン ドパミン神経終末からドパミンの放出を促進します。シンメトレル、塩酸アマンタジン錠などがあります。副作用でむくみや幻視が出ることがあります。
MAO-B阻害剤 脳内でドパミンの分解を抑制し、効果を延長します。エフピー錠があります。1日1回(朝)か1日2回(朝、昼)使用します。主に日内変動に対して使いますが、病初期から使うこともあります。立ちくらみ、幻覚、ジスキネジアが出ることがあります。
COMT阻害剤 Lドパと併用することで、脳に入る前にLドパが分解されることを遅らせ、脳に入りやすくします。症状の日内変動に使用します。コムタン錠があります。Lドパの副作用が出ることがあります。尿が赤く着色しますが、問題はありません。
ドロキシロパ 脳内に不足しているノルアドレナリンを補充します。特にすくみ足症状に使用されます。起立性低血圧にも使用することがあります。ドプス錠があります。
ゾニザミド もともとはてんかんの薬です。Lドパの作用を増強・延長します。ふるえや日内変動に投与します。ジスキネジアや幻覚がでにくいとされます。トレリーフ錠/ゾニサミドがあります。使用量が1日25mgから50mgまでに増量されました。
アデノシンA2A受容体阻害剤 脳内でドパミンは神経系に対し抑制的に働き、アデノシンは興奮的に働いています。パーキンソン病ではドパミンが不足する結果、アデノシンが優位になり神経系を過剰に興奮させ、その結果、運動障害が出現するといわれています。この薬はアデノシンA2A受容体を阻害し、アデノシンの働きを抑え、ドパミンとのバランスをとる作用があります。Lドパで治療中の日内変動に使う、新しいタイプの薬です。ノウリアスト錠があります。
初期の治療

初期は生活や仕事に支障がなければ薬を内服せずに経過をみます。

支障がでてくれば高齢者(70-75歳以上)であったり、物忘れが強い場合はLドパで治療を開始します。

高齢や強い物忘れがなくても仕事などの都合で症状の改善を強く希望する場合はLドパで治療を開始しますが、通常は特別な事情がなければドパミンアゴニストで治療を開始します。

そして症状の改善が十分でなくなれば、その後Lドパか、ドパミンアゴニストを追加する、または増やしていきます。(パーキンソン病のガイドライン2011)

進行期の治療

パーキンソン病では薬がよく効くハネムーン期が5年程度あるといわれています。しかし、進行期になると運動合併症、非運動合併症が問題となってきます。

運動合併症は次のものがあります。

症状の日内変動(ウェアリング・オフ現象) 薬の効く時間が短縮し、次の服用までに効果が消える (パーキンソン病の進行に伴って、ドパミンを保持する神経終末が減少するためとされています)
オン-オフ現象 Lドパの服用時間と関係なく症状が突然に良くなったり(オン)、悪くなったりする(オフ)
オンの遅れ Lドパの効果が出るまで時間を要する
オンの消失 Lドパを服用しても効果を認めない
不随意運動(ジスキネジア) 体の一部が勝手に動き、止まらない、口唇をかむ、しゃべりにくい、じっとできない、手足を思ったように動かしにくい

進行期の運動合併症への対策としては、薬を頻回に内服する、効果が長めの薬に変更する、注射製剤を活用するといった方法がとられます。また、Lドパの吸収をよくするために、空腹時に服用する、粉砕してレモン水やビタミンCと内服する、胃腸の働きを高める薬を一緒に飲む、などの方法があります。

非運動合併症である便秘、排尿障害、起立性低血圧、よだれ、睡眠障害、幻覚・妄想などの症状に対しても治療が必要になります。

外科的治療

様々な薬剤を服用しているにもかかわらず症状のコントロールが必要な場合、または副作用がある場合に、脳深部刺激療法(DBS)を検討します。

脳内に電極を埋め込み、電気刺激を送ることで神経細胞の興奮を抑えます。

手術を行っている施設は限られ、施設によって適応の基準も異なりますが、70歳以下であること、Lドパの反応があること、薬が効いているときに独歩可能なレベルであること、認知症がないことなどが適応の基準になります。

期待される効果としては、オフ状態の底上げ、オン症状の肩代わり(Lドパ減量できる)があります。

7.症状への対処と日常生活・介護の注意点

パーキンソン病の症状は多彩ですが、薬による治療を行うとともに、生活面・介護面で注意して対応していくことで症状を和らげることができます。

すくみ足 あたかも足の裏が地面に張り付いたようになって足が前に出ない状態です。上肢のすくみ、言葉のすくみなどもあります。進行期に出やすく、突進歩行とともに転倒の原因になります。歩行開始時、方向転換時、狭い場所で現れやすくなります。対応としては「いちに、いちに」の号令をかけて聴覚を刺激すること、床にテープをはり、目印にして歩く、赤外線杖を使用する、などがあります。
首下がり パーキンソン病そのもの、抗パーキンソン薬、その他の原因で生じる、頭部がうつむいたように下がって、挙がりにくくなる症状です。 抗パーキンソン薬の調整をしたり、その他の原因が判ればその治療をしてみます。
よだれ 唾液の量はむしろ減少するという報告がありますか、無意識に唾をのみこみにくくなること、頭や体が前かがみになること、口が開きやすいことなどからよだれが出やすくなります。対策としては飴やガムをかんで一時的に唾液を減少させる、定期的に意識して唾を飲み込む、口をしめる、頭を上げるなどのリハビリを行います。
便秘 非常に多い合併症です。腸の動きが悪化しておこります。対策としては適当な運動、水分摂取、繊維の多い食品の摂取、腸内細菌の改善(乳酸菌、牛乳など)を心がけ、便秘薬を使用します。ひどい場合にはパーキンソン病の抗コリン薬を中止することもあります。便秘薬には腸に水分を移行させて便を柔らかくする塩類下剤、大腸刺激性下剤、消化管蠕動運動促進剤、座薬などの種類があります。また漢方薬も有効で、麻子仁丸、潤腸湯、大建中湯などがよく使われます。体質にあったものを選ぶことが大切です。
幻覚、妄想 約30%の人に生じると言われます。最も多くみられるのが幻視です。人の気配を感じたりする軽いものから子どもや親せき、犬などが見える明確なものがあります。悪口が聞こえる幻聴、被害妄想、嫉妬妄想(配偶者の浮気など)もあります。高齢、パーキンソン病の罹患期間の長いこと、運動機能の重症化、抗パーキンソン薬、睡眠障害、うつなどが関連因子です。感染症、脱水、頭部外傷・骨折などが誘引となることもあります。治療は、強い不安や興奮がある際に行います。内服薬を順番に減量、中止していきます。アルツハイマー病の薬(アリセプト)が有効なこともあります。漢方(抑肝散)、非定型向精神薬(セロクエルなど)を使うこともあります。
起立性低血圧 収縮期血圧が起立後20-30mmHg以上低下し、立ちくらみをおこします。対策としては、貧血や脱水などの原因があればそれを取り除き、原因となる薬があれば調整します。日常生活の中では一気に立ち上がらずに座ってから立つ、立ちくらみを自覚したらすぐ座り、転倒を予防します。他にも弾性ストッキングの使用や薬物治療もあります。起立性低血圧は食直後や飲酒後、長湯でおこりやすく注意が必要です。
Dopamine dysregulation syndrome(DDS、ドパミン調節障害) ドパミン補充療法の影響で生じる異常行動のことで、薬への依存、病的な賭博行為、インターネット依存、買い物依存、性的亢進、過食など、衝動的で自己抑制困難な行為や、今やる必要のない行為(ネットサーフィン、ウォーキング、タンスの整理、ガーデニング、収集など)を延々とやり続ける反復常同行動と呼ばれるものがあります。治療としてパーキンソン病の薬を変更してみます。

8.パーキンソン病で注意が必要な他の病気の薬

① パーキンソン症状を悪化させる可能性がある薬(服用する量にも依ります)
胃腸薬 プリンぺラン、ドグマチールなど
うつや不安 ドグマチールなど
精神薬 リスパダール、ジプレキサなど
認知症の薬 アリセプト
てんかんの薬 デパケン
② パーキンソン薬を効きにくくする可能性がある薬
胃酸の分泌を抑える薬 ガスタ―、タケプロン、オメプラールなど
(便秘薬のマグネシウム製剤はあまり心配ない)
③ パーキンソン薬により副作用が強くなるおそれのある薬
うつの薬 パキシル、ジェイゾロフト、トレドミンなど

9.運動について

  • 運動、リハビリは疲れない程度に、日課を決めて規則正しくしましょう。
  • 姿勢をととのえ、胸を拡げましょう。歩幅を大きく保ちましょう。
  • できる間は筋力を維持するための立ちあがり、階段昇降などを行い、ゴルフやヨガ、太極拳などを楽しみましょう。
  • 筋肉ストレッチをしましょう。
  • 大きく均等な文字を書く練習をしましょう。
  • 転倒予防のために家の見直しをしましょう。廊下は見通しをよくし、コード類や敷物はとりのぞき、凸凹を修理しましょう。手すりを設置しましょう。転びやすくなってきたら転倒の要因を知りましょう。
  • デイケアやデイサービスなどの介護サービスも積極的に利用しましょう。
  • 症状が進んで来たら、必要に応じて適切な車いす、椅子、ベッドなどの補助具を整えましょう。
  • 症状が進んでも可能であれば見守りや介助で歩行を続けましょう。
  • 介護が必要になったら、必要に応じて適切な体位変換、皮膚の手入れを行いましょう。肺炎の予防に口腔内を清潔に保つことも重要です。

10.快適な生活を送るために・・・

パーキンソン病の治療目標は「治す」ではなく「症状の緩和」です。一人一人の病状、生活状況に合わせた、こまやかな内服調整が必要になります。主治医にどんどん相談しましょう。

主治医に症状を伝えるためにも、病気の症状日誌をつけると有効です。一日の中で症状が変動する場合など、内服時間と動きやすさの程度、不随意運動の程度、睡眠の状況などを時間ごとに記入し、受診の際に主治医にみせましょう。

薬を自己判断で急に中止することは非常に危険で、生命にかかわることがありますので絶対にやめましょう。

病気になったことに不安はありますが、あまり症状にこだわらず、病気や薬の理解を深め、いつも身体、心、社会生活を豊かに保つことを心がけましょう。

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