パーキンソン病の音楽療法について
基礎知識と療養のポイント
監修;兵庫県立尼崎総合医療センター リハビリテーション部
(令和2年度難病教室より)
音楽療法って?
音楽の持つ生理的、心理的、社会的働きを用いて、心身障害の回復、機能の維持改善、生活の質の向上、行動の変容などに向けて、音楽を意図的、計画的に使用すること
【日本音楽療法学会の定義】
音楽活動と音楽療法との違い
音楽活動と音楽療法は何が違うかということですが、音楽は娯楽と考えておられる方もとても多いですし、私自身も日々娯楽の1つとして音楽を使用することがあります。それだと、どんな方でも簡単にできますね。しかし、音楽療法では上記にもあるように、意図的・計画的に音楽を使用することが重要です。ただ歌う・ただ音楽に合わせて動くだけではなく、音楽療法士は対象者の疾患や動作レベル、また生活背景なども考慮し、その方お一人お一人に合わせた音楽療法プランを作成しています。
音楽療法は大きく分けて2つ
①受動的音楽療法 | “音楽を聴く” |
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②能動的音楽療法 | “音楽を演奏する、歌う” |
音楽を【聴く】ことで心が安らいだ、という経験はありませんか?また音楽を【演奏する】、歌を【歌う】事で活動的になったりストレス発散になることもあると思います。音楽を聴くことはストレスホルモンである”コルチゾール”を減少させる働きがあると考えられています。
実際音楽を聴くことで、不安が和らいで気持ちが安定したり、不安で眠れなかったのが眠れるようになったり、イライラ・そわそわしていたのが落ち着けるようになったりという効果もよく目にします。ではここでどのような音楽が良いのか・・と言うことなのですが、はっきりとは決まっていません。
よく「どんな音楽(曲)を聴けばいいですか」と聞かれますが、私はいつも「ご自身にとって心地の良い音楽(曲)が良いでしょう」と答えています。その中でも、できればあまり交感神経を刺激するような激しい音楽よりは、落ち着いた音楽の方が望ましいと思います。
パーキンソン病と音楽療法
- パーキンソン病は”振戦・筋固縮・歩行障害・無動”の4つを主症状としますが、それに加え”声が小さくなる・声がかすれる・言葉がはっきりとしない”という症状がある方も多いと思います。その発声発語の症状改善に「歌」が活用できると考えます。
- 「歌う」ことが呼吸・発声・声の響きなどに関わる器官を最大限に活用し、更に楽しく行え、治療への意欲向上、抑うつ状態の軽減、心理的な効果も期待できると考えます。
- 今回は自宅で簡単にできる、口・首・肩の体操と能動的音楽療法(歌う)をお伝えします。
ご自宅で能動的音楽療法を行う際の注意点
実施の際はくれぐれも無理のない範囲で行いましょう。
①体調の確認 | 今、身体を動かすことや呼吸はしんどくないですか? まずご自身の身体に問いかけてください。薬の副作用などでジスキネジアが起こり、身体が勝手に動いてしまう場合は椅子から転げ落ちてしまう可能性もありますので、状態が安定するまで行わないことをお勧めします。 |
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②水分補給 | お水や麦茶など、利尿作用の少ない飲物(ノンカフェインの物)をこまめにとり、声帯をいつも潤しておきましょう。 |
③椅子の選び方 | パーキンソン病の患者さんの多くは、バランスを崩しやすいので転倒による事故を防ぐために座って行ってください。椅子は上半身を安定した状態で支えてくれるものを選びましょう。背もたれは転倒を防ぐことができるので必須です。肘掛けは姿勢が左右に傾いてしまう方にはあった方が安心です。丸いすやソファーなど上半身の安定しない物はお勧めできません。 |
④座り方 | 背もたれにもたれずやや浅く腰掛け、足を肩幅くらいに開き足の裏がしっかりと床につくようにしましょう。ただし背もたれに背中がついていないと姿勢を保つのが難しい方や震えが酷くなる方は背中を背もたれにつけても構いません。背中と背もたれの間にクッションを入れるのもいいでしょう。 |
⑤頻度 | 短時間の練習を回数多く行いましょう。10~15分位の短い練習を毎日行うのが理想的です。長時間まとめて間を開けて練習するのではなく、毎日短時間でも練習した方が喉に負担がかからず効果があります。 |
⑥声の調子がおかしい時 | 喉の調子がおかしい、声がかすれるといった症状が2週間以上続くときは、不必要な力が喉に入り、無理な発声を行っている可能性があります。直ちに練習を中止し、耳鼻咽喉科を受診してください。 |
参考書籍:羽石英里 パーキンソン病のための歌によるリハビリテーション.2012.春秋社
まずは軽く口周り・身体を動かして、準備をしましょう!
参考HP:『はじめよう! やってみよう! 口腔ケア』
https://www.kokucare.jp/training/training/enge/
- 『♪春が来た』のメロディーに乗せて、あ行から順に50音歌唱してみましょう。慣れてきたら文字を見ずに頭で思い浮かべながら歌ってみましょう。
※メロディーを2回(7から2回目)繰り返すとちょうど終わるようになっています。 - ゆっくり、大きな声で歌うよう心がけてください。
- 鏡を見て、ご自身の口の動きを確認しながら歌うのも良いでしょう。