肺動脈性肺高血圧症のお薬について
監修;兵庫県立尼崎総合医療センター 薬剤部
このページの目次
治療薬と副作用について
肺動脈性肺高血圧症の治療は肺血管拡張薬を使用します。
主要な薬剤の作用経路は3点
- エンドセリン
- 一酸化窒素
- プロスタサイクリン
症状に合わせていくつかの
お薬を組み合わせて治療します

1)エンドセリン(ET)受容体拮抗薬
エンドセリン受容体拮抗薬は、血圧を低下させ血管への負担を減少させます
注意すべき副作用
- 頭痛、顔面の紅潮
- 倦怠感、食欲不振 → 肝機能低下の可能性
- 急な体重増加、息切れ → 心不全増悪の可能性
薬物間相互作用について
薬剤の血中濃度が高すぎると、副作用出現のリスクが上がり、低下しすぎると効果が発揮しづらくなります →飲み合わせや食べ合わせに注意が必要です
お薬 | 使用する目的 |
---|---|
リトナビル含有製剤 ダルナビル含有製剤 コビシスタット含有製剤 |
HIV感染症など 新型コロナウィルス 感染症など |
イトラコナゾール | 真菌感染症など |
食べ物との相互作用について
注意すべき食べ物の例
- グレープフルーツジュース:マシテンタン等の血中濃度が上昇
→ 副作用出現リスクが上昇 - セントジョーンズワート:マシテンタン等の血中濃度が低下
→ 薬効が減弱

2)①ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤
血管を拡げ、血の流れを良くします。→呼吸を楽にします
注意すべき副作用
- 頭痛、ほてり
- 口唇・口腔、眼など全身に紅斑やびらん→スティーヴンス・ジョンソン症候群
- 目のかすみや見にくさ、耳の聞こえにくさ
2)②可溶性グアニル酸シクラーゼ(sCG)刺激薬
血管を拡げ、血の流れを良くします。→呼吸を楽にします
注意すべき副作用
- 頭痛、めまい
- 喀血、肺出血
3)①PGI2誘導体製剤
肺の血管を拡げ、血液をさらさらにして血の流れを良くします。→呼吸を楽にします
注意すべき副作用
- 血球減少 →血尿や鼻血などの出血傾向
- 頭痛、ほてり、顎痛
3)②PGI2受容体作動薬
肺の血管を拡げ、血液をさらさらにして血の流れを良くします。→呼吸を楽にします
注意すべき副作用
- 頭痛、下痢、顎痛
- 血球減少 →血尿や鼻血などの出血傾向
- 低血圧
注意していただきたいこと
- 主に血管が拡がることで、むくみや頭痛が副作用に挙げられます
- 喀血や血尿など一部重症な副作用が出現することもあります
- 予後改善には副作用をコントロールして、個人に応じた最適な量まで、増量することが重要です
↳ 対症療法で副作用をコントロールすることも大切です
副作用 | 対症療法の例 |
---|---|
頭痛 | 鎮痛薬(ロキソプロフェンナトリウム水和物やアセトアミノフェン)の服用 |
下痢 | 止瀉薬(ロペラミド®など)の服用 |
顎痛 | 食事など、かみしめる前に飴やガムを食べる |
副作用の症状は服用を続けると軽くなっていくことがあります(体が慣れるため)
気になる症状があれば自己中断せず、医師、薬剤師にご相談ください。
薬価および指定難病の医療費助成制度について
マシテンタンなどは薬価が高く、そのため治療費は高額となる傾向にあります

- 「肺動脈性肺高血圧症」は国が指定している指定難病です
- 基準を満たしている方は医療費助成を受けることができます

※申請手続きや指定医療機関、難病指定医などについては、お住まいの都道府県、指定都市の窓口へお問い合わせください
まとめ
- 血管を拡げて効果を発揮する薬剤を複数組み合わせて治療する
↳ 副作用には頭痛やふらつきなどが多い - 喀血など重篤な副作用が出た場合にはすぐに受診する
- 気になる症状があれば自己中断せず、医師、薬剤師にご相談する
- 妊婦さんや妊娠の可能性がある場合には注意(催奇形性リスクあり)が必要
- 薬価はかなり高額である
↳ 指定難病のため、医療費助成制度がある