潰瘍性大腸炎について
監修;兵庫県立尼崎総合医療センター 消化器内科
潰瘍性大腸炎で使用される治療方法
薬剤名/治療法 | 寛解導入療法 | 寛解維持療法 |
---|---|---|
5-ASA製剤 | ● | ● |
血球成分除去療法 | ● | × |
ステロイド | ● | × |
チオプリン製剤 | × | ● |
タクロリムス | ● | × |
抗TNFa抗体製剤 | ● | ● |
トファシチニブ | ● | ● |
ベドリズマブ | ● | ● |
ウステキヌマブ | ● | ● |
当院での潰瘍性大腸炎治療の流れ
当院での5-ASA製剤の使い分け
① 全大腸炎型、左側大腸炎型
② 直腸炎型
5-ASA経口製剤と局所製剤の使い分け
直腸炎型を除き局所製剤のみでの治療は行っていない。
ステロイドの使用例
ステロイドの使用を検討するケース
- 5-ASA製剤で寛解導入が困難な症例
- 発熱や腹痛などがあり臨床症状が強い症例
- 局所製剤での治療強化を期待できる症例
ステロイドが奏効した症例
チオプリン製剤の使用例
チオプリン製剤の使用を検討するケース
- 5-ASA製剤のみでは維持療法が不十分
- 5-ASA製剤に対する薬剤アレルギー(5-ASA不耐)
- ステロイド依存性(抵抗性)
チオプリン製剤が奏効した症例(5-ASA不耐)
タクロリムスの使用例
タクロリムスの使用を検討するケース
- ステロイド依存/抵抗の症例
- 大腸の潰瘍が深いなどの重症例や激症例
- 維持療法としてチオプリン製剤の使用が可能な症例
タクロリムスが奏効した症例
抗TNFα抗体製剤の使用例
抗TNFα抗体製剤の使用を検討するケース
- ステロイド依存/抵抗の症例
- サイトメガロウイルス感染の合併を疑う症例
- 5-ASA製剤アレルギーの症例(維持療法も踏まえ)
抗TNFα抗体製剤の使い分け
- 重症例では点滴製剤を選択
- 体格の良い患者では点滴製剤を選択
- 外来導入可能な患者には皮下注製剤を選択
ベロリズマブの使用例
ベドリズマブの使用を検討するケース
- ステロイド依存/抵抗の症例
- タクロリムスや抗TNFα抗体製剤が無効の症例
- 高齢者など免疫抑制剤の使用を避けたい症例
ベドリズマブが奏効した症例
今後の潰瘍性大腸炎診療の課題
- 潰瘍性大腸炎患者の増加及び長期罹患例の増加により、潰瘍性大腸炎関連大腸癌発症の増加が見込まれる。
- 高齢潰瘍性大腸炎患者も増加しており、安全面により配慮した治療薬剤選択が重要。
- 治療薬剤の選択肢が増えたが、明確な治療ストラテジーに基づいた薬剤使用の適正化が重要。