救急医療に従事する医師や看護師が、消防からの要請に応じて救急現場に出動し、病院に到着する前から医療処置を開始することを病院前救急診療もしくはプレホスピタルケアと言います。全国的にドクターカーやドクターヘリが普及する中、より早期に高度な医療処置が行われることで救命率の向上をはじめとして大きな成果が挙がっています。ただし、そのシステムの多くは基本的に成人患者を対象としたものです。
また、医師によるプレホスピタルケア以外にも成人の救急においては、平成3年度の救急救命士制度の発足以来、特定の重症患者に対して救急救命士が一定の救急処置を行えるようになっています。しかし、小児に対してはそのような処置はほとんど適応されておらず、依然として病院前での小児患者への医療介入は難しいのが現状です。
そこで、当院は小児救急救命センターの事業の一環として、小児に特化したプレホスタルケアを提供する「小児ドクターカー」の運用を行っています。それにより、病院前での重症小児患者への早期かつ適切な医療介入が可能となっています。
当院小児ドクターカーの紹介(特徴、出動範囲、運用時間、車両紹介)
特徴
当院では小児症例の要請の場合、成人とは独立した要請基準(キーワード方式)を設けて、小児科医療に従事する医師が対応しており、それが当院小児ドクターカーの特徴となっています。
当院小児ドクターカーの出動範囲
出動範囲は主に阪神南北医療圏で、具体的には尼崎市、伊丹市、西宮市、川西市、宝塚市、芦屋市、三田市、猪名川町の7市1町からの出動要請に対応しています。また、その他の地域の消防から出動要請があった場合にも積極的に出動しています。
運用時間
運用時間は朝9時から夜21時までとなっており、緊急対応ができるよう運用時間内は専属のスタッフが待機しています。
車両紹介
当院のドクターカーは2021年10月に新車両に変わりました。新車両は救急車タイプで、旧ドクターカー車両のその装備は維持しながらよりコンパクトなため、以前よりも機動力が増し迅速かつより道が狭小な地域への対応が可能となっています。なお、旧車両は現在も主に施設間搬送用車両として使用しています。
旧車両(日産シビリアン)
新車両(トヨタハイメディック)
119番通報からドクターカー出動、患者様搬送までの流れ
ドクターカーの要請方法には大きく分けて以下の2つがあります。
覚知同時要請 | 消防本部指令室に救急要請があった時点でキーワードに該当し、救急車と同時に当院ドクターカーへの出動要請がかかるもの。 |
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現着時要請 | 覚知同時要請のキーワードに該当しないが、救急隊が患者と接触時に、ドクターカー出動が必要と判断した場合に要請されるもの。 |
当院小児ドクターカー運用状況(2015年度~2020年度)
要請件数
要請元消防本部
施設間搬送(迎え搬送)
他の医療施設からの要請により、重症小児患者の転院に際しての迎え搬送を行っています。
保護者の方へ:小児ドクターカー出動に関する費用について
ドクターカーは、病院前で医療行為を行うシステムであり、救急車が行う「応急救護」とは異なり、通常の病院診療と同様に保険診療となります。ただし、小児に関しては、通常の健康保険に加え、乳幼児医療が適応されます。
搬送時には、病院到着の際に保護者の方にドクターカー搬送に関するリーフレット「小児患者さんのご家族の方へ」をお渡ししておりますので、ドクターカー搬送の際にご参照ください。