大腸がん

当科では、大腸(結腸・直腸)のさまざまな疾患に対して外科治療を行っております。

  • 良性疾患に伴う大腸の狭窄(狭くなる)や腸閉塞、大腸の穿孔(穴が開く)と続発する腹膜炎などに対して、緊急手術を含めた外科治療を施行しています。
  • また当科での主な業務となっているのは、悪性疾患(結腸癌、直腸癌)に対する外科的切除であり、術前および再発などに対する化学療法(抗がん剤療法)や放射線療法と連続的に一体化した治療(集学的治療)を行っております。

当科で手術を受けて頂く方の大半は大腸癌であり、当科での手術数と手術成績を示します。

当科で最も治療を受けていただく頻度が高い大腸癌について

はじめに

「大腸癌かどうか心配」「大腸癌と診断されたけどどうしよう・・・」など、大腸癌にまつわるさまざまな不安や心配をお持ちの方も少なくないと存じます。確かに、放置すれば生命にかかわる疾患であることに違いはありません。しかし、検査機器や手術手技、化学療法(抗癌剤)などの進歩により、近年治療成績は大きく改善されています。進行して遠隔転移を認める状態で発見されたとしても、切除できる状態であれば根治の可能性も充分にあります。大腸癌が心配になったり、大腸癌の診断を受けた場合、かかりつけ主治医の先生等とご相談の上、まずは専門的な医療機関を受診されることを強くお勧めします。

大腸(結腸・直腸)とは

大腸は消化管の終末に位置し、食物が消化吸収された残りの内容物から水分を再吸収して大便にする臓器です。大腸菌や乳酸菌などの腸内細菌のちからで、食物繊維の分解や感染予防の働きもしています。
おなかの右下(へそと腰骨の間)にある盲腸から始まり、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸と続き、腹壁を貫いて肛門に達する約15cmの真っすぐな部分が直腸です。

 

大腸癌とは

大腸に発生する固形の腫瘍(できもの)で、大腸粘膜の細胞から発生します。粘膜の表面から発生し、大きくなりながら大腸の壁に次第に深く侵入していきます(浸潤)。大腸の壁を壊しながら大きくなるため、経過中に出血して便に血が混ざったり(貧血、下血)、腸管が狭くなって便の通過が悪くなったり(便秘、腸閉塞:イレウス)します。増悪する際にリンパ組織や血管内に癌細胞が侵入し、肝臓、肺などの離れた臓器に転移(遠隔転移)をきたすことがあります。このように浸潤や転移といった性質をもち、全身に拡がって様々な症状をきたす病変を「悪性の腫瘍=癌」と呼んでいます。

大腸癌の症状

  • #血便、下血(便に血が混ざる)
  • #下痢と便秘の繰り返し、便が細い、便が残る感じ(便通異常)
  • #おなかが張る、腹痛、嘔吐(通過障害)
  • #原因不明の体重減少や極度の疲労

などがあります。

血便は、痔(ぢ)などの良性疾患でも同じ症状なので、早めに消化器科、胃腸科、肛門科などを受診することが早期発見につながります。

大腸癌の病期(ステージ)

0期(上皮内)

0期では、異常な細胞が結腸壁の粘膜(最も内側の層)内のみ(M)にみられます。0期は上皮内癌とも呼ばれています。

I期(局所限局)

I期では、がんが結腸壁の粘膜に形成され、粘膜下組織(粘膜の外側にある組織)まで(SM)拡がります。さらに外側の結腸壁の筋肉層にまで(MP)拡がる病変もⅠ期です。

II期(局所進展)

癌病巣が結腸壁の筋層を貫通して結腸壁の漿膜(最も外側の層)に拡がったり(SS、A)、さらにそれを超えて隣接する組織や臓器に拡がった(SE、SI、AI)場合がⅡ期です。

III期(リンパ節転移)

Ⅲ期は、癌の周囲への深達度によらず、癌組織がすでに隣接のリンパ節に拡がっているか、がん細胞がリンパ節付近の組織に形成された状態です。転移リンパ節が3個以下ならⅢa、4個以上ならⅢbとなります。

IV期(遠隔臓器転移)

肝臓、肺、卵巣、骨など大腸に近くない臓器にまで拡がったり、腹腔内に癌細胞がばらまかれるように拡がった場合(腹膜播種)はⅣ期となります。

大腸癌の検査

〈直腸指診〉届く範囲なら、肛門から指で触診です。
〈便潜血検査〉便中に血液があるかを顕微鏡下で調べます。大腸癌検診でも行われます。
〈注腸検査〉肛門から造影剤を投入してレントゲン撮影です。

〈大腸内視鏡検査〉肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内腔を直接観察します。組織片やポリープを採取して検査したり、病変を切除したりすることも可能です。

〈生検〉内視鏡検査で採取された細胞や組織を、顕微鏡下でがんの徴候があるかどうか病理医が調べます。組織生検検査をもって確定診断とされることがほとんどです。
〈CT、MRI〉X線または核磁気共鳴を利用し体腔の断層撮影を行います。造影剤が使用されることもあります。病変の周囲への拡がりや遠隔転移の検索に用います。

〈PET(陽電子放射断層撮影法)〉悪性腫瘍細胞の存在診断を全身的に行います。少量の放射性グルコース(糖)を静脈内に注入し、グルコースが体内で利用されている部分の像を撮影します。悪性腫瘍は正常細胞よりグルコースをより多く吸収することから、より明るく撮像されます。

大腸癌の治療

以下のような治療があります。

手術療法(外科的に病変を切除)

大腸癌の治療の基本は、手術による切除です。癌を含めた腸管と周囲のリンパ節(腸間膜という脂肪組織の中に血管やリンパ管と一緒に存在しています)を切除します。癌が周囲の臓器に浸潤している場合には、それらの臓器も一緒に切除します。
癌の位置により、切除する腸管の範囲が異なります。

基本的には、切除した後は断端同士を吻合(つなぎ合わせる)します。しかし、腫瘍の部位や腸管の長さなどによっては吻合できず人工肛門を造設せざるを得ない場合があります。
当科では、開腹手術に加え、当院では腹腔鏡手術も積極的に導入しています。
開腹手術は、通常20cm以上の傷です。
腹腔鏡手術は、5か所の小さな傷(1か所は4~5cm、それ以外は1~2cm)から細い筒(トロッカーといいます)を挿入して、二酸化炭素でおなかを膨らませて、カメラや腹腔鏡専用の器械を入れて手術を行います。
腹腔鏡手術のメリットは傷が小さく癒着が起こりにくいこと、痛みが軽いこと、排ガスが早いことが挙げられます。逆に、デメリットは手術時間が長くなること(開腹手術より1~2時間長くなります)、心臓や肺に持病がある場合は悪化する可能性があること、腫瘍の進行度合いや癒着のために途中で開腹に変更することが挙げられます。腹腔鏡手術が可能かどうかは、主治医にお問い合わせください。

手術から退院までの期間は7日間(入院期間は10日間)前後です。手術後に食事制限は特にありませんが、食べすぎには十分注意して、消化のよい食品、バランスのよい食事を心がけ、アルコールは飲み過ぎないようにしてください。手術の合併症として、出血、疼痛、感染、他の臓器障害(脳梗塞や脳出血、肺炎、心筋梗塞、腎不全など)やお薬に対するアレルギーなどに加えて、大腸癌の手術に特徴的なものとして、
〈縫合不全〉縫い合わせた腸管の断端同士がくっつかず、便がもれて腹膜炎になります。程度によっては再手術や人工肛門の造設が必要になります。
〈腸閉塞〉術後、おならや便が出なくなり、吐き気を催したり吐くことがあります。手術で腸の動きが鈍くなることや、傷に腸が癒着することで内腔が狭くなることが原因となります。鼻から管を通したり、再手術が必要になることがあります。

化学療法(抗癌剤による治療)

大腸癌治療において、抗癌剤の果たす役割は年々大きくなっています。使用される抗癌剤の種類は増えており、数種類の薬剤が併用されることもしばしばです。入院しなくても、通院で実施可能な投与法も多く、治療成績は年々向上の傾向にあります。
「手術で切除しきれない」、「手術後に再発した」などの場合が抗癌剤治療の対象となります。主に以下の薬剤が使用されます。
5FU (5FU、UFT、ゼローダ、S-1など)
オキサリプラチン (エルプラット)
CPT-11 (カンプト)
ロイコボリン (アイソボリン、ユーゼル)
などです。併用組み合わせによってさまざまな名称で呼ばれ、FOLFOX(5FU+アイソボリン+エルプラット)、FOLFIRI(5FU+アイソボリン+カンプト)、SOX(S-1+エルプラット)などがあります。
現在、化学療法のみで大腸癌を根本的に治すことは困難です。また、抗がん剤の効果には個人差がありますので、投与量や期間は人によって様々です。しかし、多くの場合、癌の悪化を遅らせることが可能です。効果があまりなかった場合は、抗癌剤を変えて治療継続したり、放射線療法を併用します。効果があって切除可能なまでに縮小した場合は、手術療法が併用され、根治切除が可能となる場合もあります。

一方で、抗がん剤には副作用も伴います。抗がん剤はがん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えるからです。抗がん剤の副作用には個人差があり、副作用の程度によっては治療を中断せざるを得ない場合もあります。強い副作用が生じた場合には抗がん剤の変更や減量・中止を行い、個人にあった抗がん剤治療を選択します。近年は副作用に対する治療や工夫も年々進歩していており、安全に化学療法を続けることができるようになってきています。現在治療を受けておられる方は、何かおかしいと思ったらすぐに主治医に相談してください。

放射線療法

直腸癌の術前や術後の補助療法として、あるいは、再発や転移した大腸癌の治療を目的としています。また、癌病変の痛みを和らげる目的で行われることもあります。放射線照射単独で行われるより、抗癌剤による化学療法と組み合わせて行われることがしばしばあります。

分子標的治療

癌細胞に特有または癌細胞に多く存在する分子構造を標的にする治療です。癌に特異的な分子構造を識別したり攻撃する薬剤やモノクローナル抗体を投与します。ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、レゴラフェニブなどが、抗癌剤と併用または単独で使用されます。

緩和治療

癌病変やその治療によって生じる、疼痛、嘔気嘔吐、倦怠感などの諸症状を和らげ、生活の質を保つ治療です。痛みに対しては適正な管理の元で、麻薬などを使用することもしばしばあります。担当主治医のみでなく、緩和医療の専門医も加わり、比較的早い時期から癌の治療に並行して症状緩和の治療が施行されるようになってきています。

再発の可能性

大腸癌の治療の原則は、手術で病変を完全に切除することです。しかし、手術では目に見える病変を切除する事はできても、目に見えない小さな癌細胞は見えないので術中に確認はできません。したがって、小さな癌細胞は体内に残っている可能性があります。もし小さな癌細胞が残っていた場合、それが手術後に目に見えるまで大きくなることを「再発」といいます。

大腸がんの再発には、以下のようなパターンがあります。

1. 局所再発

癌がもともとあった部位の近く(局所)に起こる再発です。もとの病変近くに小さな癌細胞が残っていたためと考えられます。

2. 遠隔転移

残った小さな癌細胞が、リンパ節や肝臓、肺、骨、脳などの離れた臓器に飛び火して大きくなることを「遠隔転移」といいます。大腸がんの遠隔転移で多くみられる部位は、肝臓や肺です。これらは、肝臓から発生する肝がんや、肺から発生する肺がんとは区別され、あくまで大腸がんとして治療します。

3. 腹膜播種(ふくまくはしゅ)

大腸の外側の表面を覆う膜を腹膜といいます。大腸にできたがんの細胞が腹膜にこぼれると、腹部のいたるところに癌細胞が散らばるように拡がります。その細胞の一部が目に見えるまでに大きくなると、腹膜のあちこちに種をまいたような再発がおこり、腹膜播種と呼ばれます。

手術後の再発予防

術後再発の可能性を低くするために、手術で病変を切除したにもかかわらず、手術の後に抗がん剤を使用する治療を「術後補助化学療法(=アジュバント療法)」といいます。
術後補助化学療法を行うことが推奨されるのは、再発の可能性が高い(ステージ)Ⅲ期の患者さんです。また、ステージⅡの患者さんであっても、再発の可能性が高いと判断される場合には、術後補助化学療法を行ったほうがよいというのが、今の一般的な考え方です。

手術後の通院

再発を早期に発見し、治療を開始するためには、定期的に通院し検査を行うことが大切です。大腸がんの再発は、ほとんどの場合、手術から5年以内に起こるといわれています。そのため、手術の後5年間は、定期的に検査を受けるのが一般的です。定期検査では、血液検査、CTやMRI、内視鏡検査などが用いられます。検査の間隔は、種類にもよりますが、通常、手術を終えて3年は3~6ヵ月に1度、それ以降5年目まではおよそ半年に1度です。