食道がん・胃がん

食道がん esophageal cancer

概略

食道は、食べた物が口から胃に入るまでに通る管で、大部分は胸腔内にあります。食道がんは早い段階からリンパ節に転移する傾向があり、また、食道の周囲には重要な臓器が密集しているため、隣接する臓器への浸潤が問題になることも多く、手術に抗がん剤や放射線を組み合わせた『集学的治療』が重要となります。
当科では、治療方針の指標として日本食道学会から出版されている「食道癌診断・治療ガイドライン」に則った治療方法をご提案しています。

 

食道がんの手術

食道がんの手術は胸で食道を周りのリンパ節と一緒に切除し、お腹の臓器(胃や大腸など)を吊り上げて首で食道とつなぐため、胸とお腹、首の2か所からの操作に加え、頸部(首)の切開も必要になります。
再建に用いる臓器は胃を管状に細くした「胃管」を用いることが一般的ですが、状況によっては大腸や小腸を用いることもあります。

術後は、経過にもよりますが、術後1週目から水を飲んだり食事ができたりするようになり、順調なら術後2~3週間で退院できます。
上述の様に、進行したがん(ステージII、III)に対しては、術前に前もって化学療法を行い、がん細胞の拡がりを抑えた上で手術を行う方針としています。場合によっては、術前に放射線治療を加えることもあります。
また、放射線化学療法を受けて治癒した後に再発した方や治癒が得られなかった方に対し、追加で食道がん切除を行うサルベージ手術も実施しています。

≪食道がん手術件数の年次推移≫

H22 H23 H24 H25 H26
手術件数 13 9 5 6 7

胃がん gastric cancer

概略

胃がんは日本人が最も罹りやすいがんの一つです。病気の進み具合(進行度)により治療法や治る率が大きく異なるため、胃がんのできた場所や大きさ、周辺への広がり具合、他の臓器に転移しているかどうかなどを把握し、最適な治療法を選ぶ必要があります。胃がんの根治(治りきること)には、手術で胃を切除することが基本ですが、比較的早期に発見されたものであれば、お腹にカメラを入れて行う腹腔鏡手術を選択できますし、より浅いがんであれば胃カメラで削り取る(粘膜下層剥離術)ことも可能です。逆に、ある程度広がったがんで、すぐに切除に行くのが得策でないと判断された場合は、前もって抗がん剤治療でがんの勢いをおとなしくしてから手術を行うこともあります(術前化学療法)。また、進行度に応じて術後に再発を予防する目的で抗がん剤を服用する場合もあります(術後補助化学療法)。

胃がんの治療方針の指標として、日本胃癌学会から「胃癌治療ガイドライン」が出ており、当科でもそれに則った治療方法をご提案しています。当科では毎週火曜日の午後に『胃がん外来』を開設していますので、お気軽にご相談ください。

 

胃がんの進行度(進み具合)

胃壁の厚さは通常3mmほどで、内側から粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜の5層からなっています。胃がんはこのうち最内層の粘膜から発生します。はじめは粘膜内にとどまっていますが、進行すると次第に深くなっていきます。途中、一部のがん細胞は壁内のリンパ管に入り込んでリンパ節に転移したり、血管に入り込んで肝臓や肺といった遠くの臓器に転移したりします。 一般に、胃がんが深くなると転移を起こしやすくなることから、深さが粘膜下層までで転移の可能性の低い胃がんを早期胃がん、筋層よりも深く転移の可能性が高いと考えられる胃がんを進行胃がんとして取り扱います。

さらに最外層の漿膜を破った胃がんの細胞は、がんの本体から離れて腹腔内を浮遊したのち、他の臓器の表面(腹膜)に種を蒔いたようにくっついて増大します(これを腹膜播種といいます)。また、胃の近くの臓器を巻き込みながら大きくなっていくこと(浸潤といいます)もあります。

胃がんの進行度はこれら「深さ(深達度)」と「転移の有無」で決まります。日本胃癌学会では下図のようにIA、IB、IIA、IIB、IIIA、IIIB、IIIC、IVの8段階に分類しています。

胃がんの手術 (術式)

胃がんの手術は、①胃の切除②リンパ節郭清③再建(つなぎ替え)の3つの要素から成り立ちます。

    1. 胃の切除:がんが胃の中央より下(幽門側)にあるときには下約3分の2を切除します。これを幽門側胃切除といい、胃がんの手術では最も多い方法です。それに対し、がんの範囲がもっと上に広がっている場合には胃を全部切除することになります。これを胃全摘術といいます。ただし早期の上部胃がんであれば、上半分だけを切除して出口側を残す(噴門側胃切除)ことができる場合もあります。
    2. リンパ節郭清:胃がんはリンパ節に転移しやすいため、術前のCT検査で腫れたリンパ節がないかどうかを入念に調べます。しかし、現状ではある程度の大きさのものでないと描出されないため、 100%正確に把握できるわけではありません。そこで胃がんの手術では、(転移がなさそうだと考えられた方に対しても予防的に)胃のまわりにあるリンパ節を胃本体と一緒に摘出する、という方法をとります。これをリンパ節郭清といいます。がんの進行度と切除術式によって、どこまでリンパ節郭清を行うかを決定します。
    3. 再建(つなぎ替え):下2/3切除(幽門側胃切除)を行った場合には、残った胃と十二指腸を直接つなぐ方法(B-I法といいます)と、小腸を途中で切って持ち上げて残った胃とつなぐ方法(R-Y法といいます)があります。胃全摘術を行った場合には、小腸を途中で切って持ち上げて食道とつなぐ方法(R-Y法)でつなぎ直します。

手術方法 ― 開腹手術と腹腔鏡手術

従来、胃の手術は上腹部に15~20cmの皮膚切開をおき、外科医が直接見て触りながら行ってきました。これを「開腹手術」といいます。
それに対し近年、お腹にあけた小さな穴からカメラを挿入し、内部の様子をテレビモニターに映し出しながら、専用に作られた手術器具で操作を行う、「腹腔鏡手術」が普及してきました。この方法は傷が小さくてすむため痛みが少なく、術後の回復も早いという利点があります。しかもカメラで細部を拡大しながら操作を行えるため、外科医は精緻で出血の少ない手術ができます。当科では、日本内視鏡外科学会技術認定医が在籍し、比較的早期のがんでリンパ節転移の可能性の少ない症例を中心に、安全で負担の少ない手術を提供しています。

当科の治療方針

  1. 早胃がんに対しては、患者さんの体にかかる負担の少ない腹腔鏡手術を行います。
  2. 進行がんに対しては、開腹手術を基本としますが、病変や患者さんの身体状況に応じて、ご相談の上、腹腔鏡手術をさせていただくことも可能です。
  3. 手術のみで取りきること(根治)が難しいと判断される場合、具体的には、胃から離れたリンパ節への転移や腹膜播種がある場合などは、抗がん剤治療を行い、根治手術が望めそうな状況になれば手術治療に進みます。その際、あらかじめ転移の有無を診断するために、全身麻酔下の腹腔鏡検査で直接おなかの中を観察させていただくこともあります。
  4. 発見された時点で既に遠くの臓器に転移していて切除不能な場合や再発の場合には、抗がん剤治療を行い、生活の質を良好に保ちながらできるだけ長期間過ごしていただけるよう治療にあたります。

クリニカルパス

クリニカルパスとは、入院から手術、退院に至るまでの医療行為を順序立てて示した行程表です。患者さんにお渡しするクリニカルパスには、入院中に受ける検査や手術の予定に加え、いつから食事が取れかとか、いつから入浴できるかといった入院生活の基本的なことまで詳しく説明されています。また退院日の予定もわかるため、その後の計画も早くから立てることができます。
当科では、幽門側胃切除術では術後3日目から、胃全摘術では術後4日目から食事が始まり、7日から10日で退院できるようなクリニカルパスを用いています。

地域がん診療連携パス

当科では、がん患者さんの術後に継続的で質の高い医療を提供できるよう、かかりつけ(紹介元)の先生と連携のもと治療・経過観察を行っています。連携診療をスムーズに行うため、手術後5年までの診察・検査を実施していくための冊子をお渡ししています。手術の結果や治療経過、また、かかりつけ医での診察・検査結果などの患者さんの情報を共有しながら診療にあたらせていただきますので、来院時には必ずこの冊子をお持ち下さい。

外来化学療法室

当院は、通院患者さんが「より快適に、より安全に」化学療法(抗がん剤治療)を受けていただける外来化学療法室を完備しています。リクライニングチェア10台とベッド5床に抗がん剤の調製室を備えた静かな空間をご用意しており、薬剤師と、がん化学療法看護認定看護師を含む専任の看護師が常駐しています。

≪胃がん手術件数の年次推移≫

H21 H22 H23 H24 H25 H26
手術
件数
117 137 93 82 65 55

≪平成26年の胃の手術内訳≫

  開腹手術 腹腔鏡手術
幽門側胃切除術 22 9 31
胃全摘術/噴門側胃切除術 20 4 24
幽門側胃切除術 5 2 7
47 15 62