科長ご挨拶

兵庫県立尼崎総合医療センター ER総合診療科科長:吉永 孝之(よしながたかゆき)からのご挨拶

ER総合診療医の一番の基本姿勢は「目の前の困っている患者をまず診ること」と考えています。現在高齢化社会を迎えており、多くの疾患を持つ患者さん、愁訴がはっきりせず何科を受診すれば良いのかわからない患者さん、救急で受け入れを断られ困っている患者さんなど多く見てきました。そういう患者さん達の受け皿はこれからますます必要となってくるのではないでしょうか。

当科の大きな特徴は総合診療とERの2つの部門の医師が協力して診療を行っていることです。丁寧な問診から始まり全身の診察行う総合診療に対して、場合によっては問診すらできない患者を素早く診察し全身状態を立て直すなどの救急初期対応を行なうERは、全く性格の違う診療科のように見えます。しかし当科では2つの部門の医師がお互い協力し、患者を別の視点から診ることによって診療の質を向上させています。

また当科は研修医教育も大切な仕事と考えています。広い視野を持つこと、他診療科やコメディカルと協調して仕事ができること、リーダーシップをとれることなど医師としてとても必要なことです。初期研修医は指導医のバックアップのもと総合診療科外来、担当医としての病棟業務を通じ総合内科診療について学びます。またCOVID19感染症のために一時期減っていた救急患者もようやくコロナ前と同じくらいに戻り、R4年度の救急搬送数は11948名と全国で5番目となりました。救命救急センターでは、軽症から最重症まで多くの患者を救急の専門医一緒に診ることによって多彩な疾患を経験でき、救急患者さんとの関わり方も学ぶことができます。また後期研修は内科プログラムと救急科プログラムの2科で専攻医を受け入れています。お互い他プログラム医師の一緒に仕事をすることにより、違う科の考え方も学べる良い環境となっています。

総合診療部門より

高齢化社会を迎え、一人が複数の疾患を抱えることも珍しくない時代となりました。一方で医療の細分化、専門性が進み、医師が提案する治療の選択肢も増えています。その結果、複数の科や病院を受診する必要があり、患者さんがどこで、どんな疾患でかかっているのか分からないこともあります。私たちは臓器別の専門があるわけではありませんが、「あなたの専門医」として、疾病を治療するだけでなく、精神面を含めた全身を診ることを1番に考えています。どこの科を受診すればよいのか迷っている方は、まず総合診療科の外来を受診して下さい。

救急部門より

1次~3次救急まで受け入れる北米型ER型のシステムをとっているため、軽症のウォークイン患者から多発外傷や心肺停止患者などの3次救急患者までさまざまな患者さんが受診あるいは救急搬送されます。一見軽症に見える患者さんの中から重症を拾い上げるのは、ER医として腕の見せ所でもあります。またバックアップとして全科の当直医或いはオンコール医がいるため必要に応じて専門的な処置に移ることができます。ただしERは救急でない患者さんに対して各科専門医が十分な検査を行ない、診断をつけ治療を行う場所ではありません。重症患者さん以外は救急医が必要と思われる検査のみ行い、多くは後日の一般外来につなぐことになります。また受診をご希望の場合は必ず事前に連絡をお願いします。