当院で手術をお考えの方へ

当院では婦人科の病気に対する以下の手術を実施しています。

内視鏡下手術(腹腔鏡下、子宮鏡下)も実施していますが、手術法の選択に際しては、安全第一をモットーに無理のない手術法の選択をします。

子宮筋腫

まずは、患者さんの症状・状態に合わせ、治療法を十分相談させていただきます。薬物療法で治療可能な場合もありますが手術が望ましい場合は、子宮鏡下手術、腹腔鏡下手術、開腹手術から最適の方法を選択します。手術前にホルモン治療(リュープリン®など)を3か月程度行う場合があります。希望・適応があれば子宮動脈塞栓術(UAE)も可能です。

子宮鏡下手術

子宮筋腫が子宮の内側に飛び出すタイプ(粘膜下筋腫)でサイズが3-4cm以下のものに適用されます。

腹腔鏡下手術

子宮温存を希望され、筋腫が多発しておらず、ひとつの筋腫サイズがおよそ10cm以下の場合は腹腔鏡下筋腫摘出術を選択します。子宮温存の希望がなく、子宮のサイズが10cm以下であれば腹腔鏡下子宮全摘術を選択します。

開腹手術

子宮鏡下手術、腹腔鏡下手術が適用されない場合は開腹手術が選択されます。患者さんの希望に応じ、腹式子宮筋腫摘出術、腹式単純子宮全摘術のうちいずれかを選択します。

子宮動脈塞栓術(UAE)

将来の出産の希望がなく子宮温存希望であり、かつ顕著な粘膜下筋腫でない場合は子宮動脈塞栓術(UAE)を選択することができます。4~6日程度の入院が必要で、実際の治療は放射線科が担当し、入院担当医は産婦人科が務めます。

子宮腺筋症

まずは、患者さんの症状・状態に合わせ、治療法を十分相談させていただきます。手術が望ましい場合は、腹腔鏡下手術、開腹手術から最適の方法を選択します。手術前にホルモン治療(リュープリン®など)を3か月程度行う場合があります。

腹腔鏡下手術

子宮温存を希望され、子宮腺筋症が限局している場合は腹腔鏡下腺筋症摘出術を選択します。子宮温存の希望がなく、子宮のサイズが10cm以下であれば腹腔鏡下子宮全摘術を選択します。

開腹手術

腹腔鏡下手術が適用されない場合は開腹手術が選択されます。患者さんの希望に応じ、腹式子宮腺筋症摘出術、腹式単純子宮全摘術のうちいずれかを選択します。

子宮頸部上皮内病変(CIN)

子宮頸部上皮内病変(CIN)のうち、CIN2で病変が改善しない場合とCIN3が手術の対象となります。

LEEP法

ループ状の電極を用いて子宮頸部の病変部を薄く削り取ります。将来の妊娠・出産への影響が少ないメリットがあります。CINの患者さんの多くはこのLEEP法が選択されます。手術後数日から1か月後程度まで切除部からの出血が発生することがあります。

子宮頸部円錐切除術

より上位の病変が疑われる場合や病変が子宮頸部の奥にあると考えられる場合などでLEEP法が選択できない場合にこの方法が選択されます。将来の妊娠での流早産のリスクが高い、子宮頸管狭窄が起こりやすいといったデメリットがあります。

レーザー蒸散術

レーザー照射器で子宮頸部の病変を焼灼・蒸散するものです。組織切除を行わないため、将来の妊娠・出産への影響が最も少ないメリットがあります。一方、組織切除を行わないため病理診断ができないデメリットがありますので、がんの可能性が否定できない、病変の境界が確認できないところがある、といった場合には適用されません。

単純子宮全摘術

CINでは通常は子宮を摘出する必要はありませんが、再発例などでは患者さんの希望があれば子宮全摘術を選択する場合があります。その場合は、腹腔鏡下手術が可能なことが多いと思われます。

良性卵巣腫瘍

まずは、患者さんの症状・状態に合わせ、治療法を十分相談させていただきます。手術が望ましい場合は、腹腔鏡下手術、開腹手術から最適の方法を選択します。腫瘍のみを摘出することを原則としますが、閉経後や卵巣温存の希望がない場合は卵巣(卵管)摘出を選択します。癒着が軽度で腫瘍が10cm以下の嚢胞性で悪性の可能性のほとんどない場合は腹腔鏡下手術が選択できることが多いと思われます。それ以外の場合は、それぞれの状態に合わせ、開腹手術か腹腔鏡下手術か相談させていただきます。

異所性妊娠(子宮外妊娠)

異所性妊娠には、待機療法、薬物療法、手術療法のうちのいずれかが適用されます。

待機療法

血中hCG値が1,000mIU/ml以下で症状がない場合、何も治療せずに自然治癒を待つ方法です。経過観察中に手術が必要となる可能性がありますが卵管を温存できるメリットがあります。

薬物療法

血中hCG値が3,000mIU/ml以下で症状がない場合、メソトレキセート(MTX)で治療する方法です。健康保険の適用外であり自費診療となります。治療中に手術が必要となる可能性がありますが卵管を温存できるメリットがあります。

手術療法

血中hCG値が3,000mIU/ml以上、腹腔内出血がある、子宮外に妊娠しているのがエコーで確認できる、といった場合は、手術が選択されます。状態に合わせ、腹腔鏡下手術、開腹手術から最適の方法を選択します。

性器脱

性器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤)では、患者さんの症状、年齢、生活状況などを総合的に検討し治療法を相談いたします。手術以外の治療法としてはペッサリーリングを膣に留置する方法や骨盤底筋体操があります。手術療法を選択する場合は以下の術式を組み合わせます。

  • 腹腔鏡下仙骨膣固定術
  • 膣式子宮全摘術
  • 膣壁形成術
  • 膣断端吊上術
  • 膣閉鎖術

子宮頸癌

子宮頸癌では状態にあわせ、手術療法、放射線療法、抗癌化学療法を選択、あるいは組み合わせて治療計画を立てます。病期ごとに治療法が異なり、また患者さんの状態によっても治療法が変わりますがおおよその選択は以下の通りです。

Ia1期(癌の浸潤が浅い)

子宮温存の希望のある場合は子宮頚部円錐切除術を選択し手術後慎重に経過観察します。子宮温存の希望のない場合は、子宮全摘術(腹腔鏡下・開腹)を選択します。

1a2、1b1-2、2a1-2期(癌の浸潤が深いか膣に浸潤)

広汎子宮全摘術か放射線治療を選択します。1b1期以下で子宮温存の希望のある場合は広汎子宮頚部摘出術が可能な施設へ紹介いたします。

2b期~4a期(癌が子宮外に進展)

手術は行わず放射線治療と抗癌化学療法を並行して行う放射線同時化学療法を選択します。

4b期〈全身に転移〉

手術は行わず抗癌化学療法が選択されます。

子宮体癌

子宮体癌では状態にあわせ、手術療法、放射線療法、抗癌化学療法を選択、あるいは組み合わせて治療計画を立てます。病期ごとに治療法が異なり、また患者さんの状態によっても治療法が変わりますがおおよその選択は以下の通りです。

1A期(癌の浸潤が浅い)

拡大子宮全摘+〈両側卵管卵巣摘出術〉が選択されます。場合により卵管卵巣の温存が可能な場合があります。グレード3(低分化)の場合は骨盤リンパ節郭清術を併用することがあります。可能な限り腹腔鏡下手術を選択するようにしています。画像上、癌の浸潤がなく、グレード1(高分化)の場合で子宮温存を希望される場合は、ホルモン療法を選択する場合があります。

1B期~3IB期(癌の浸潤が深いか広がっている)

拡大子宮全摘、両側卵管卵巣摘出術、骨盤リンパ節郭清術を選択し、場合により傍大動脈リンパ節郭清術(生検術)を併用します。

4期〈全身に転移〉

手術は行わず抗癌化学療法が選択されます。

卵巣癌

卵巣癌では状態にあわせ、手術療法、抗癌化学療法を選択、あるいは組み合わせて治療計画を立てます。病期ごとに治療法が異なり、また患者さんの状態によっても治療法が変わりますがおおよその選択は以下の通りです。

1期(卵巣に限局)

早期で子宮温存希望の場合は腫瘍側の卵巣卵管摘出術のみを選択します。子宮温存希望のない場合は、子宮全摘、両側卵管卵巣摘出術を選択し、場合により骨盤リンパ節郭清術を併用します。

2期以上

子宮全摘、両側卵管卵巣摘出術を選択し、場合により骨盤リンパ節郭清術、傍大動脈リンパ節郭清術を併用します。場合により手術前に抗癌化学療法を導入したり、審査腹腔鏡を行うことがあります。