内服治療など保存的加療で効果のない慢性副鼻腔炎に対して、内視鏡下手術により副鼻腔を開放し病変の清掃を行います。慢性副鼻腔炎の中でも近年増加傾向の著しい好酸球性副鼻腔炎は、難治性であり手術を行っても再発率が高く、平成27年に厚生労働省の指定難病となりました。当科ではこの好酸球性副鼻腔炎に対して、術前内服治療+手術(すべての副鼻腔を徹底的に清掃するとともに鼻腔・副鼻腔を理想的な形態に是正(単洞化))+術後管理(内服・点鼻治療および鼻洗浄の指導など)という治療方針により再発率を軽減しています。また、ナビゲーションシステムを標準装備しており、安全な手術を心がけております。また、一般的には鼻副鼻腔の術後処置(ガーゼの抜去や鼻内清掃処置など)には苦痛を伴いますが、当科では新しい方法(銀イオン付加カルボキシメチルセルロース塩の使用)により術後創部の治癒促進および鼻処置の不要化(少ない通院回数)、苦痛の軽減を実現しています。好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合には、初診時に、CT、血中好酸球数測定、鼻内ポリープ生検による好酸球数カウントなどの確定診断に必要な検査をすべて行い、患者さんに速やかに指定難病申請手続きをしていただき医療費助成を受けられるように配慮しています。
手術加療を行っても再発する症例では、ステロイド内服加療を中心とした外来通院を行っていただきます。難治性慢性副鼻腔炎の中でも好酸球性副鼻腔炎は主に好酸球やIgEなどの因子を中心とした2型免疫反応が起因となっていることが研究から判明しています。現在この2型免疫反応因子をターゲットにしたDupilmab(製剤名:デュピクセント)などの生物学的製剤も開発されており、手術とステロイド加療を行ってもコントロールが難しい症例ではデュピクセントの使用もおこない、症状のコントロールを行っています。
当科の鼻外来の特徴(特に慢性副鼻腔炎に対して)は、定期的な外来受診に来ていただき、症状や鼻所見に点数をつけて、その方の症状を丁寧に観察し、必要とあれば適切なステロイド加療やデュピクセント投与判断を行うことにあります。またこれらの治療法を手術前から説明させていただき、慢性副鼻腔炎=手術で絶対に治るというわけではないことを理解していただきます。術前からどのような形で術後フォローしていくかを説明させていただくため、多くの患者さんから疾患に対する理解を深めることが可能となります。自動車などが安全に走るためにメンテナンスが必要なように、副鼻腔炎の術後にはこまめなメンテナンスが必要となります。手術はあくまでもその疾患に対するメンテナンス法の一つであり、術後の外来通院が一番大切なメンテナンス法であることを理解してもらえれば幸いです。
好酸球性副鼻腔炎を中心に難治性の症例を治療前から予測することはある程度可能です。しかしながら、好酸球性副鼻腔炎と診断されても再発しない症例もあれば、通常の慢性副鼻腔炎と診断しても再発する症例もあります。これは、現行の診断基準では拾い切れていない因子が難治性の機序に深く関与していることを示唆しています。当科では、このような難治性慢性副鼻腔炎の機序解明を目指した新しい臨床研究を開始しています。この臨床研究は当施設が主機関となり、京都大学附属病院 耳鼻咽喉科・頭頚部外科と連携しておこなうものです。詳しいことを知りたい場合は、本研究の責任者である石川 正昭までご連絡ください。なお下記のように本研究に関連した研究助成の採択もうけており、今後さらに臨床研究を進めていこうと考えています。
採択されている臨床研究
- ① 日本アレルギー学会臨床研究支援プログラム 2020年度
“コリン作動性抗炎症反応経路に焦点を当てた慢性副鼻腔炎の新たなエンドタイプ分類が有する臨床的意義の検証” - ② 科研費若手研究 2021年-2024年
“鼻腔内におけるアセチルコリン受容体発現パターンの異種間での比較検証”
アレルギー性鼻炎
くしゃみ、鼻水、鼻づまりがひどい場合、まずは内服薬や点鼻薬による治療を行いますが、それでも症状の改善が不十分な場合、当科では積極的に手術を勧めています。内視鏡下鼻中隔矯正術および粘膜下下鼻甲介骨切除術、後鼻神経切断術を同時施行することにより、くしゃみ、鼻水、鼻づまりのすべての症状を劇的に改善させることが可能です。特に後鼻神経切断術に関しては、術後出血リスクの軽減、鼻内の生理的血流保持の目的に、血管を温存し神経のみを選択的に切断する術式で行っています(以前は神経と血管を内視鏡下に分離することが困難でしたが、最新のハイビジョン内視鏡システムを導入することで可能になりました)。また、後鼻神経切断術は、アレルギー素因のない血管運動性鼻炎に対しても一定の有効性が示されており、当科でも重度の鼻水でお困りの方にはお勧めしています。
慢性副鼻腔炎
内服治療など保存的加療で効果のない慢性副鼻腔炎に対して、内視鏡下手術により副鼻腔を開放し病変の清掃を行います。慢性副鼻腔炎の中でも近年増加傾向の著しい好酸球性副鼻腔炎は、難治性であり手術を行っても再発率が高く、平成27年に厚生労働省の指定難病となりました。当科ではこの好酸球性副鼻腔炎に対して、術前内服治療+手術(すべての副鼻腔を徹底的に清掃するとともに鼻腔・副鼻腔を理想的な形態に是正(単洞化))+術後管理(内服・点鼻治療および鼻洗浄の指導など)という治療方針により再発率を軽減しています。また、ナビゲーションシステムを標準装備しており、安全な手術を心がけております。また、一般的には鼻副鼻腔の術後処置(ガーゼの抜去や鼻内清掃処置など)には苦痛を伴いますが、当科では新しい方法(銀イオン付加カルボキシメチルセルロース塩の使用)により術後創部の治癒促進および鼻処置の不要化(少ない通院回数)、苦痛の軽減を実現しています。好酸球性副鼻腔炎が疑われる場合には、初診時に、CT、血中好酸球数測定、鼻内ポリープ生検による好酸球数カウントなどの確定診断に必要な検査をすべて行い、患者さんに速やかに指定難病申請手続きをしていただき医療費助成を受けられるように配慮しています。
鼻副鼻腔腫瘍
鼻副鼻腔には、悪性、良性を含むさまざまな腫瘍が発生します。進行した悪性腫瘍に対しては顔面皮膚切開による根治手術を施行することもありますが、基本的には顔面に傷をつけずに内視鏡下の摘出術を行っています。難易度の高い内視鏡下鼻副鼻腔手術V型(拡大副鼻腔手術)の施設基準を当科は取得しており、たとえば前頭洞深部に進展した副鼻腔内反性乳頭腫のような難治性疾患に対しても内視鏡のみでの腫瘍摘出を行っています。また、拡大手術においてもできるだけ鼻涙管や鼻甲介などの構造物を温存して術後の流涙や鼻機能低下を防いています。鼻と脳の境界に生じる頭蓋底悪性腫瘍に対しては、顔面皮膚切開をせずに開頭および内視鏡下操作による腫瘍摘出(脳神経外科との合同手術により)を行っています。
鼻性視神経症
副鼻腔炎や副鼻腔嚢胞の感染などにより視神経に炎症が波及し急激な視力低下を来す疾患です。治療が遅れると失明のおそれがあり、一刻も早く手術で病変の除去、視神経の開放が必要となります。当科では、このようなケースに対して、受診して数時間以内には内視鏡手術(視神経管開放術)を施行するようにしています。 。
診察曜日 | 毎週水曜日・木曜日 / 鼻専門外来 |
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担当者 | 石川 |