神経内視鏡手術

神経内視鏡手術

近年、脳神経外科では脳や神経の侵襲を最小限におさえる手術(低侵襲手術)を重視しています。その1つに神経内視鏡手術があります。神経内視鏡は脳内出血や水頭症、脳室内や下垂体の腫瘍性疾患を治療する際に使用されます。当科には神経内視鏡技術認定医が複数名在籍しており、積極的にこの治療を行っております。

神経内視鏡を用いることにより、従来は開頭(頭蓋骨を大きく開ける)をしなければできなかった手術を内視鏡を用いることにより穿頭術(10mm程度の小さい穴)で行うことができます。その結果、手術時間が短縮した、侵襲をおさえた手術が可能となります。また、従来の顕微鏡を用いた手術では到達できなかった部分を手術することができるようになりました。

硬性鏡(硬性内視鏡)

曲がらない硬い筒で覆われており、広い空間をよりはっきりと見ることができます。先端の角度によってそれぞれ異なる方向が見えます(写真の上から0度,30度,45度)。

軟性鏡(軟性内視鏡)

ファイバースコープの先端が柔らかく曲がることで、重要な構造物を避けて深部まで到達することができます。

神経内視鏡手術における穿頭範囲

頭蓋骨に500円玉より少し小さい穴を開けるだけで手術が可能です。

硬性鏡を用いた脳内血腫除去術

小さい穴からカメラで見ながら血腫を安全に吸引することができます。

神経内視鏡が特に有用な手術

脳内出血、脳室内出血に対する血腫除去術

内視鏡による脳内出血の治療は最近発展している治療です。全身麻酔、場合によっては局所麻酔で低侵襲かつ血腫除去効果の高い手術が可能です。

閉塞性水頭症に対する開窓術

髄液の流れがどこかでせき止められて脳室に髄液が過剰に溜まってしまう病気を閉塞性水頭症と言います。内視鏡を用いることで、せき止められた脳室と脳室、または脳室とくも膜下腔(脳槽)の間に交通をつけて治療することが可能です。

脳室内腫瘍に対する生検術

脳の奥深くの脳室内で、内視鏡観察下に腫瘍を採取して病理診断を行います。腫瘍の大きさによっては大部分を摘出することも可能です。

下垂体腫瘍に対する経鼻的摘出術

下垂体は頭の中央部分にあるため、従来の開頭手術では到達が難しい部分ですが、鼻腔から内視鏡を挿入することで、比較的安全に下垂体腫瘍に到達し、摘出することが可能です。

その他

従来の顕微鏡を用いた開頭手術の際にも、必要に応じて内視鏡を組み合わせることで、顕微鏡のみでは見ることができない狭い裏の構造物を観察することができます。これにより、重要な構造物を内視鏡で確認しながら、より安全に顕微鏡手術を行うことが可能になります。