最近のトピックス:MICS手術

「心臓の手術が必要といわれたけど、大丈夫なのだろうか・・・」という不安、MICS手術(ミックス手術)が解決策になりかもしれません!

MICS手術とは?

MICS手術(ミックス手術と呼びます)とは低侵襲心臓手術という意味で、近年めざましく発展している領域の一つです。一口にMICS手術といってもいろいろな考え方や方法がありますが、根本にある考え方はできるだけ患者さんの負担を減らすということです。

なぜMICS手術なのか?

1)患者さんの早期社会復帰を目指して

MICS手術はリスクの低い働き盛りの患者さんの社会復帰(職場復帰)をより早めるという社会的メリットがあります。従来の心臓手術は胸の中央にある胸骨という骨を縦に切り、手術終了時にワイヤーで固定します(図①)。

従来の手術創
[図①]

術後2週間程度で退院になりますが、骨が完全に着いて安定するには2−3ヶ月を要します。それまでは重い荷物を持つことや体を捻る運動は控えていただきます。MICS手術では骨を切らない、若しくは切っても部分的に留める小切開手術を行うことにより、治癒期間が短縮され早期社会復帰を目指せます。特に体を動かす仕事に就いている方にお勧めです。

2)超高齢、重症な患者さんの新しい治療の選択肢

近年、心臓血管の病気に対して治療を必要とする患者さんのなかで、高齢あるいは複数の疾患を有する重症な患者さんの割合が増えています。医療技術や医療工学の発展により従来からの外科治療はほぼ確立されたものとなり安全性も高くなっていますが、時に侵襲の大きさは無視できず、超高齢重症の患者さんには体力の消耗が大きく術後思うような回復が得られないことがあります。従来そのような患者さんは治療を断念するか、危険を承知で手術を受ける選択に迫られましたが、MICS手術の登場で治療の選択肢が広がってきました。

MICS手術はどうやるの?

一つの方法として、右胸に7cm前後メスを入れ、骨を切らずに肋骨と肋骨の間から心臓を見て手術を行います(図2-①)。心臓のどこを手術するかによって切開の場所が変わることがあり、胸骨を部分的に切開する方法もあります(図2-②)。

MICSの手術創
[図2]

弁膜症など心臓の中を見る手術は人工心肺というポンプ装置が必要ですが、胸骨を大きく開く通常の手術は心臓に出入りしている大動脈及び大静脈という太い血管にそれを取り付けるのに対して、MICSの場合は太もも付け根の血管(大腿動静脈)や右肩の血管(腋下動脈)に取り付けることが多いです。具体的にはCT検査の結果をもとに個々の患者さんごと一番安全な方法を選択します。まさにオーダーメードの手術になります。通常の手術とは異なり、MICS手術には専用の細長い器具を使うのでそれに習熟する必要があります(図3)。心臓の中で行うことは基本的に通常の手術と同じで、これまで通り長きにわたる術後の安定した状態を目指します。

従来の手術器具と、MICSの手術器具の比較図。MICS手術には専用の細長い器具を使います。
[図3]

心臓血管外科で行っているMICS手術

これまで当心臓血管外科で行ってきたMICS手術は主に右肋間小切開による僧帽弁手術、胸骨部分切開による大動脈弁手術です。特に前者は通常の心臓手術とは異なり胸骨を切らないため回復が速く、仕事への早期復帰を目指す患者さんに喜ばれています。今後の展開として、大動脈弁手術も図①のタイプの手術に移行すること、冠動脈バイパス術にも対応すること、精度の高い術前検査や体外循環の工夫でより高齢の方にも安全に行えることを目指します。