- 新たな診療取り組み
チームの正式名称
急性血液浄化サポートチーム
BPST:Blood Purification Support Team
急性血液浄化療法とは
急性血液浄化療法とは、バスキュラーアクセスカテーテルを用いて体外循環を行い、血液浄化器によって血液中に存在する病因物質を除去、もしくは不足している物質を補うことで、血液のバランスを整える治療のことを指します。その主な対象疾患は急性腎傷害ですが、敗血症や心不全、肝不全、代謝障害など多臓器にわたる集中治療において幅広く行われます。
持続的腎機能代替療法(CRRT:Continuous Renal Replacement Therapy)
持続的腎機能代替療法
循環動態が不安定な場合に施行される腎機能代替療法です。持続的かつ緩徐に水分除去や電解質補正、pH調整、尿毒素の除去を行います。炎症性サイトカインを除去する目的に行うこともあります。適応疾患には急性腎傷害、心不全、急性肝不全、重症急性膵炎等があります。
血漿交換(PE:Plasma Exchange)
血漿交換療法
膜型血症分離器を用いて血漿と血球を分離し、血漿成分を廃棄することで幅広い分子量の病因物質を除去する治療法です。廃棄した血漿の代わりに、血液製剤由来の置換補充液を必要とします。適応疾患には急性肝不全、自己免疫疾患、血栓性血小板減少性紫斑病等があります。
新生児を含めた小児を対象とする急性血液浄化療法
小児、特に10kg未満の小さな小児に対する血液浄化療法は、そのバスキュラーアクセス確保の難しさや、プライミングの大変さなどもあり、ごく限られた施設のみで施行するに留まっています。しかし、当院では小児救急集中治療科が中心となり、BPSTのサポートのもと小児症例への急性血液浄化療法を行っています。また、診断、バスキュラーアクセスの確保、回路プライミングなどを一貫して行うことで、迅速な急性血液浄化を施行することができています。
チームの構成メンバー
診療部(腎臓内科、救急科、循環器内科、小児救急科、心臓血管外科、麻酔科)、臨床工学室、薬剤部、栄養管理部、看護部
チームの活動内容
現在院内には複数の集中治療室(ICU)があり、持続的腎機能代替療法をはじめとした多数の急性血液浄化療法が施行されています。しかしながらその適応やタイミング、施行方法に関しては未だに明確なエビデンスが乏しく、標準化されているとはいえません。また、重症患者様に体外循環を行うこと自体に様々なリスクがあり、医療安全面での対策も重要です。
急性血液浄化サポートチームは、週1回のラウンドを行い、院内各ICU(EICU、GICU、PICU、CCU)における急性血液浄化療法が、できる限り安全かつ効果的に行えるよう、それぞれの専門性を発揮し、チームでサポートしていきます。
成人急性血液浄化療法施行実績
平成28年度CRRT164症例、血漿交換3症例に施行しています。
小児急性血液浄化療法施行実績
急性血液浄化療法の内訳としてはCRRTと血漿交換が中心であり、平成28年度はCRRT 16症例(延べ施行日数118日)、血漿交換25症例(延べ施行日数100日)に施行しています。中でも難治性川崎病に対する血漿交換においては全国でも有数の施行件数であり、兵庫県内はもとより、近隣の府県から受け入れ要請にも対応しています。
CRRT、血漿交換の施行症例
CRRT | 血漿交換 | |
---|---|---|
年齢 (平成28年度) |
中央値2歳(最小日齢0、最大14歳) | 中央値4歳(最小1ヶ月、最大12歳) |
施行疾患 (平成23年~) |
急性腎不全 急性肝不全 溶結性尿毒症症候群 腫瘍崩壊症候群 高アンモニア血症 急性薬物中毒 うっ血性心不全 |
IVIG不応性川崎病 劇症肝炎 重症薬疹(Stevens-Johnson症候群) 急性脳症(高サイトカイン型) 血球貪食症候群 侵襲性肺炎球菌感染症 紫斑病性腎炎 視神経脊髄炎 若年性特発性関節炎 急性散在性脳脊髄炎 心筋炎 |
実際の治療/回診風景
小児PE
小児CRRT
回診の様子
回診の様子
回診の様子
回診の様子
資格、施設認定
当院小児救急集中治療科、臨床工学室には急性血液浄化学会認定指導者も在籍しており、近年中の同学会施設認定を目指しています。
最後に
BPSTの発足により、成人、小児における急性血液浄化療法がより迅速に導入でき、より安全に管理、維持できる体制が整っています。今後も急性血液浄化療法が必要な患者様に、適切かつ安全な治療ができるよう、BPSTの活動を続けていきます。